朝食好きのバイブルともいえる、『いつかティファニーで朝食を』。第2巻は、第1巻よりもさらに多様な朝食が紹介されている。また、登場人物たちの気持ちを切り替えるターニングポイントになっていることも多く、「朝食が持つパワー」についても考えさせられた。
辛い気分は、朝食で切り替えてしまおう
仕事や人間関係で嫌なことがあっても、気分が落ち込んでいても、どんなときにも朝はやってくる。そんなときに美味しい朝ごはんを食べれば、不思議と力が沸いてきて、いつのまにか気分を切り替えられることがある。
恋人にドタキャンされた典ちゃん、好きだった編集の仕事から営業への転属することになってしまった創太郎、姉にきつい言葉を放ってしまったリサ、子どもに怒りすぎたことを反省する栞、長年連れ添ったペットが亡くなってしまった麻里子。皆、何かしら落ち込むことがあっても、なんとか朝を迎えている。
しかし、重い腰を上げて美味しい朝食を食べると、自然と「こんなふうに朝ご飯を食べるのっていいな」と幸せな気持ちになれる。そして自分の悩みや課題と向き合って、前に進んでいこうとポジティブに転換できるのだ。

もちろん、朝食を食べれば何でも解決するってことではない。でも気持ちを切り替える、弱っていた自分にパワーをチャージする、そんな役割を朝食が果たしてくれているのではないか、と感じる。
大好きなペットのみかんが亡くなってしまい、食欲のわかない麻里子に対して、麻里子のお母さんは次のセリフを言う。
麻里ちゃんは東京に戻るけど
『いつかティファニーで朝食を』②
お母さんたちはこれからずっとここで
みかんがいない生活を続けなきゃいけない
平気な時はいいけど ふとした時に淋しいって気づいた時
おなか減ってたらふんばれないがね
…だからやっぱり…
朝ごはんはうんと食べないとね!
しっかり朝食を摂ることは、弱った心を回復させてくれるだけじゃなく、これからの未来に備えることにもつながるのかもしれない。
立ち食いうどんだって、朝食である
第1巻の紹介でも同じことを言ったが、朝ごはんと言えばまず、トーストとコーヒーか、ごはんにみそ汁が思い浮かぶ。しかし、朝に食べれば、朝ごはんである。
今回、麻里子の元恋人・創太郎が赴いたのは、立ち食いうどんの店だった(五反田『おにやんま』)。好きだった編集の仕事から営業に転属が決まり、しかも仕事でミスをしたことで落ち込んでいた彼は、看板を見かけてふらりと立ち寄る。店内にはサラリーマンばかり。なんとか席を確保してうどんをすする。すると、あまりの美味しさに一気に食べてしまうのである。
ほかにも、帰省前に麻里子が立ち寄ったのが、東京駅「ラーメンストリート」内にある『六厘舎』だった。朝ラーメンだ。メニューには「朝つけ麺」なるものがあり、ぜひとも食べてみたい。

自分でつくる朝ごはんはやっぱりいい
外に食べに行く朝食もいいけれど、やっぱり家で食べるのも良い。第2巻では、麻里子が自分で朝食をつくり、典ちゃんに振る舞うシーンもあった。
東京・初台にある『SUNDAY BAKE SHOP(サンデー・ベイク・ショップ)』は、名前の通り“日曜日だけ”営業する菓子店。焼き菓子やケーキ、スコーンなどを販売している。
そこで麻里子が買い物をしながら、「忙しくてなかなかちゃんとした朝ごはんをつくれない」と話すと、店員さん「クイックブレッド」のつくり方を教えてくれる。
クイックブレッドとは、なんと30分くらいでつくれてしまう超・お手軽パン。発酵いらずでオーブンでできるのでとても簡単だ。本書の中にレシピが入っているので、ぜひつくってみたい。同様に紹介されていた「にんじんスープ」、「洋ナシのサラダ」も手軽で美味しそう。
朝食を食べに行くことにも満足感はあるけれど、自分でつくることにはまた、別の満足感があると思う。“ちゃんと朝食を作れる自分”という称号は、大きいのではないだろうか。
同じご飯を朝食べるのと夜食べるのでは、気分が全然違う。2巻では、1巻よりもさらに朝食のパワーや魅力を感じることができた。今後も続きを紹介していきたい。
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