料理レシピの「適量」とは何か?「自分なりの適量」を知ることから始めよう

料理初心者にとって、「適量」はかなり難解な言葉だ。料理をし始めて、最初にぶつかる壁と言ってもいい。

「結局どれくらいなの?」と混乱してしまうこの存在に、多くの人が悩まされてきたはず。私も気づけば料理歴が長くなりつつあるが、最初はレシピ本の適量に悩まされた口である。

では、私たちはいったい、適量をどう考えればいいのだろう?

適量=自分の好みによって変えてもいい量

レシピにおいて「適量」とは、適当な量、つまりはっきりと決まった量ではない。「ちゃんと書いてほしい」と思う人も少なくないだろうが、はっきり書いてしまうと、味が決まらない可能性が考えられる。

たとえば、濃い味が好きな人もいれば、やさしい味わいが好きな人もいる。だからお好みで変えてください、ということである。特に、適量入れる調味料は、その最終調整やまとめ役を担っている。だから、厳密な量を示さず、そのときどきで調整しながら使うほうが好ましい。

最終的に頼りになるのは、“自分の舌”

細川亜衣さんの『野菜』を読んでいたら、料理の「適量」に関する言及があった。

レシピによってはあえて材料の分量を入れなかった。つまり適量ということだが、食べる人の好みやその日の気分によって各人が決めるのがよいと、多くの料理について私は考えている。「トマト1個」といっても、大きいのも小さいのもある。分量はあくまで目安と考えてほしい。

『野菜』細川亜衣

調味料にしても、鍋の大きさや熱源の種類、火力など、さまざまなことで味は左右される。慣れないうちは味の想像がつきにくいだろうが、ひたすら味見をするしかない。いちばん頼りになるのはレシピの分量ではなく自分の舌だということを、繰り返し作るうちに気づいていただけると思う。

『野菜』細川亜衣

確かに、野菜一つとっても大きさはものによって変わるし、そこに含まれている水分や、甘みなどもそのときどきで変わる。だとしたら、何度も作ってみて、好みの味の作り方を知ることがとても大切なのではないだろうか。

適量とはすなわち、自分好みにカスタマイズできるという大きな魅力があるのだから。

分量は自分で決めてしまってもいい

お菓子などの正確な分量が決まっている場合や、味をきちんと再現したい場合などは当然、細かな計量が必須になってくる。しかし、自宅で簡単に作る家庭料理の場合は、多少適当にやったところで平気である、と思ってしまう。

料理で「うつ」から回復する ──『cook』著者・坂口恭平さんに聞く「明日を生き延びるための方法」では、『cook』の著者である坂口恭平さんのインタビューが掲載されている。その中に、本書内に記載されているレシピについての言及があった。

正確な分量なんてないですよ。分量は自分で考えればいいんです。レシピ本にあるのはそれを書いた人の味つけだから、自分の体の調子に合わせて大体な感じでいいと思うんですよね。

料理で「うつ」から回復する ──『cook』著者・坂口恭平さんに聞く「明日を生き延びるための方法」

本当にそうだ。自分の調子や好みによって、好きに変えたっていいのだ。

自分なりの適量を知れば、料理がより楽しくなる

料理を日常的に作るようになってから何年も経ったが、今になって思うのは、自分なりの適量がわかった瞬間から料理が楽しくなったということ。

レシピの分量には目を通すけれど、つくり始めてからの調味料の量は自分の好み次第で変えるし、具材も冷蔵庫の余り物に合わせて変えることもある。もちろん失敗したことも多くあるが、実験的に何度もやっているとおのずと、自分の適量が見えてくることを実感している。

今では勝手に自分でレシピ名のない料理も作るし、食材の相性や調味料の足し引きもそれなりに覚えた。それはとても心地よく、料理を好きになるきっかけの一つになったといえる。

「適量」という言葉にアレルギーを感じる人もいるかもしれない。でも、何度か料理を作りながら、自分なりの適量を知ることができれば、何倍も料理が面白くなるはずだ。どうかめんどくさがらず、オリジナルの適量を探求してほしい。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。