いがらしろみ『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』#2 ジャム専門店を開いた理由



『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』は、お菓子研究家・いがらしろみさんがお菓子研究家となり、ジャムの専門店『Romi-Unie confiture』を開くまでの道のりを描いた一冊。

パティシエを目指して勉強し、就職してお菓子づくりの研鑽を積んできたいがらしさん。ではなぜ、パティスリーではなくジャムの専門店を開いたのだろうか。そこには最高のジャムとの出会い、そして新しい“お菓子”への挑戦があった。

アルザスで出会った、最高のジャム

フランスから帰国後、『コルドン・ブルー』の日本校で働き始めたいがらしさん。事務仕事や講師のシェフのアシスタントといったお菓子づくりとは少し離れた仕事だったものの、学校運営の面白さに目覚めて楽しく働くことになる。しかし、「一生学校の事務をするのは違うのではないか」と思い、再びフランスへ。二度目の来訪となる、アルザスへ向かった。

お菓子屋さんを巡ったり、地方菓子の本を購入したり、イベントに参加したりと、とことんお菓子三昧の滞在。そしてその過程で出会ったのが、『メゾン・フェルベール』のジャムだった。

フェルベールさんのお店『メゾン・フェルベール』は、ニーデルモルシュヴィルという村にあり、アルザスの魅力を凝縮したようなその村の名物お菓子店でした。実際食べてみたら、ジャムがフレッシュで、驚くほど美味しい。今まで味わったことのないジャムでした。

『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』いがらしろみ

「私の周りの人にも、ぜひ知ってほしい味」と思ったいがらしさんは、大量に買い込み、さらにフェルベールさんの本を購入して、実際につくってみることにした。このときはまだ仕事にすることは考えておらず、純粋にジャムづくりを楽しんでいたのだそうだ。

Tesa RobbinsによるPixabayからの画像

個人活動をスタート。イベントでのジャムづくり

あるとき『カフェ・アプレ・ミディ』のオーナー橋本氏からカフェで出すお菓子づくりを頼まれ、フードメニューをすべて手掛けることに。それをきっかけにお菓子づくりの個人活動を開始。砂井三枝さんとのフードユニット「ROMY MiER(ロミミエ)」でフードイベントやケータリングを行い、さまざまなお菓子をつくっていった。

ところが、三枝さんの結婚をきっかけにロミミエの活動が休止。さらに勤めていた「コルドン・ブルー」が横浜校をオープンすることになったため、横浜校への異動を提案される。さまざまな変化が起こる中で、いがらしさんは「コルドン・ブルー」を辞め、本格的に個人活動へ邁進していく。

そして転機が訪れる。ガラス瓶の輸入会社『WECK』に「自社の瓶に詰める食べ物をつくってほしい」と頼まれ、「ガラスの瓶だったらジャムがいいかな」と思い付き、ジャムを商品としてつくることになるのである。商品は予想以上に好評を博し、いがらしさんがつくったジャムの写真が販促用のポストカードに掲載されるほどの事態となった。

これをきっかけに、ブランチのフードイベントでジャムを提供するなど、ジャムづくりが仕事として動き出した。作り置きができるジャムは、一人での活動にも適していたという。

しかし、ただジャムをつくるだけではない。いがらしさんには今までお菓子づくりの道のりを歩んできたからこその思いがあった。

私は、「お菓子としてのジャムを作るとこうなる」というのを表現したかったのです。ただの保存食品としてのジャムというのははじめから考えていませんでした。ジャムを作るという意識より、食べる楽しさを瓶のなかに盛り込みたい、と考えたのです。

『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』いがらしろみ

こうしてジャムの仕事を続けるうちに、「この仕事をいずれは自分のジャムのお店に結び付けていきたい」と思うようになり、活動を続けるための名前として「Romi-Unie Confiture(ロミ・ユニ・コンフィチュール)」を名乗るようになったのだそうだ。

Michal JarmolukによるPixabayからの画像

ジャム専門店をつくるために、行動を起こす

「いつかはジャムのお店を持ちたい」と考えるいがらしさんに、さまざまな話が舞い込むようになる。六本木ヒルズの『ミュゼ・イマジネール』(現在閉店)に商品を置いてもらったり、「うちの会社でお店をやりませんか」と声をかけられたり……しかしなかなかうまくいかず、お店を開くことができずにいた。

そこでいがらしさんは、なんと自身で売り込みをかけることにする。以前に「『WECK』の瓶でいがらしさんのジャムを売りたい」と言っていた「セルフィユ」の長澤社長を思い出し、すぐに電話をかけ、会いたいと伝えたのだ。

何度か会って「ジャム屋をオープンしたい」と話しているうちに「一緒に何かお仕事ができるかもしれない」と感じ、ついにいがらしさんが思い切って提案する。

「ロミ・ユニ・コンフィチュールの運営をしてみませんか」

いがらしさんの一言に長澤社長は「願ったり叶ったり」と快諾。ジャム専門店への第一歩が始まったのだった。

本書を読んでいると、いがらしさんの行動力の高さに驚く。本当に自分が何をしたいかをつねに考え、つねにそれに向けて行動している姿がうかがえる。『romi-unie-confiture』がいつも新しくておいしいジャムやお菓子をつくり出しているのは、この行動力に秘訣があるのではないかと思うほどだ。



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たけの
フリーの編集者・ライター。食関連の書籍・雑誌・Webサイトで活動中。祖父母は定食屋、両親はレストランを経営。飲食店一家に生まれ、食の虜に。美味しい飲食店や料理、食文化・歴史・ニュースなどを発信しています。