沖縄の建築物にコンクリート製が多いのはなぜか?――『沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶』

「沖縄の建築物」と聞いて思い出すのはあの鮮やかな赤瓦。あるいは古き良き木造建築の家……だけではない。

そういう人も多いかもしれないが(そして、それも確かにそうなのだが)、沖縄に通い始めて気付いたのは、コンクリートの建築物の多さである。もはや、私にとって沖縄の建築物といえば、四角いコンクリート。

台風があるから丈夫なものが好まれているのかと何となく思っていたが、『沖縄島建築』を読んで意外な事実を知った。

コンクリート工法が普及した時代のこと

本書によれば、コンクリート工法が本格的に普及したのは1945~72年の米軍統治時代のこと。基地建設に伴ってさまざまな建築技術が導入された際、入ってきた工法のようだ。

台風やシロアリ被害などにも強いコンクリートは「琉球復興金融基金」でも推奨され、一般住宅にもよく使われるようになった。また、木材不足も普及を拡大する要因の一つになったという。

建物の多くがコンクリートになっていく中で、かの有名な赤瓦も一時期廃れてしまったこともあるほどだそう。生活のことを考えれば頷ける話であるし、今の沖縄にある建物を見ても、その普及率は実感できる。

それにしても、台風・シロアリ対策は想像できても導入・普及の背景はまったく知らなかったので驚いたし、無知が恥ずかしくなった。利便性だけでなく、歴史的な出来事が大きく関係していたのである。

外人住宅街に直書き看板、沖縄ならではのコンクリート

沖縄県外にも当然、コンクリートの建物はたくさんある。しかし、沖縄のコンクリート建築物には、いくつかの特徴がある。

まず、沖縄の四角いコンクリートの建築物にはよく、イラストや企業名などの文字が直接書かれている。今では見慣れたものになったのだが、初めて見た時は新鮮であった。確かにコンクリートの平坦な壁であれば、何でも綺麗に書けるし目立つ。

本書でも「直書き看板」としていくつか紹介されている。この直書きの経緯の推測として「巨大な台風への対策なのか、経緯費削減なのか」(p.94)とあり、なるほど……確かに台風で吹っ飛んでしまう心配は、直書きにはないなあと納得したのだった(あくまで推測だが)。

あるいは、浦添市・港川の外人住宅街に代表される「外人住宅」もまた、沖縄ならではのコンクリート建築物。コンクリートの平屋とコンクリートスラブ(板)の屋根からなっている。

もともとはアメリカ軍人が暮らすために立てられた家だが、現在は「沖縄の人が再定義したかたちで住居や店舗として使われている」(p.120)とのこと。

おしゃれな雑貨屋や飲食店も多く、観光スポットとしても慣れ親しまれているが、本書に綴られた時代背景を読んでいると「占領」「沖縄の人々が自主的に選び取ったものではない」という言葉が並んでいて、心苦しく感じた。戦争の歴史と、コンクリート建築物は繋がっている。

何気なく「多いなあ」と思っていたその理由が、少しでもわかってよかった。沖縄の歴史や文化を、今後も学びつづけたい。

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