山口県岩国市にある「TARO ichigo」は、住宅街にビニールハウスと販売店舗を構えるいちご農家。
栽培されるいちごはお客さんから「練乳がいらないくらい甘い」「よそのいちごはもう食べられない」「ほっぺが落ちる」などと言われ、根強いファンも多い。加えて、価格帯は小粒ワンパック(300g)450円、中粒ワンパック(300g)でも540円と比較的リーズナブルになっている。
美味しくて手に取りやすいいちごはどうやって作られているのか。その裏側をフジテレビ系列の番組「セブンルール」から学んだ。
採れたてを直売所で売る
「TARO ichigo」では「さちのか」を中心に栽培している。さちのかは酸味と甘みのバランスがちょうど良いのが特徴なのだという。
熟しているかどうかを見分けるときは、ヘタのギリギリのところを見るのみ。根元までしっかり赤くなっているかどうかが、ポイントだそうだ。「ちょっとでも白いと、美味しいは美味しいけど最高潮ではない」とオーナーの山中さんは言う。しっかりと熟れているものはつやがあり、見た目から輝いている。
販売するまでに時間があるのだろうし、熟れ切っていないものを取るのが一般的なのでは? と勝手に想像していたが、そんなことはない。バナナなどは青いのを採っても追熟していくが、いちごは取った時点から追熟しなくなるだそうだ。だからこそ、「できるだけ早く食べるっていうのが、いちばん美味しい食べ方です」と山中さん。直売所では、基本的に朝のもぎたてを販売している。
また、詰めるときはテトリスのように隙間を埋めるのが肝。こうするといちごが動きにくく、摩擦が減るという。さらに何回も詰め直すといちごが潰れるので、一回で終わらせることが重要だと話していた。出来上がるまではもちろん、直接お客さんの手に渡るまで細心の注意を払うからこそ、感動するほど美味しいいちごになっているのだろう。
研究者だからこそできること
もともと農薬メーカーの研究者だった山中さんは、その経験も農作業に活かしている。
たとえば、いちごの株の根元を顕微鏡で覗き、どれくらい芽が生えるのかを確認。その後、ビニールハウスの株から芽を摘んで1株1芽にし、全体数を減らしている。その目的は「一株の中で一番とびきりのやつを残すんです。その一つの芽に栄養を集中させるようにしています」とのこと。採れるいちごの数は減ってしまうが、そのぶん質はぐんと上がるのだそうだ。
人気ゆえに、お客さんや同業者からも「もっと拡大すれば?」と提案されることも多いというが、山中さんは「美味しさを保つにはこの面積までじゃないと手が回らない」と語っていた。それほどに、一粒一粒に精魂込めて作っているということでもある。岩国は東京からすぐに行ける場所ではないが、やはりぜひ、一度は食べてみたいと強く感じたのだった。
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