『小説の解釈戦略』川口喬一。『嵐が丘』を恋愛物語以外の視点で考える
エミリー・ブロンテ『嵐が丘』は、読む前からあらすじを知っていた。最初に読んだのはもうずいぶん前だが、確か荒々しい愛の物語であるとどこかで聞いて、「そうなんだ」と思いながらページを捲った。 ところが読み終えてみると、これが...
エミリー・ブロンテ『嵐が丘』は、読む前からあらすじを知っていた。最初に読んだのはもうずいぶん前だが、確か荒々しい愛の物語であるとどこかで聞いて、「そうなんだ」と思いながらページを捲った。 ところが読み終えてみると、これが...
吉本ばななさんの小説『彼女について』は「魔術」「呪い」「宗教」などの目に見えないものがキーワードとなっている。目に見えないものを信じること自体はもちろん悪ではない。しかし、それに振り回され、苦しみ、悲しい事件が巻き起こっ...
コンビニで働く人の話かなあと思い、読み始めた。確かに、そうだった。そうだったが、想像の斜め上を行くとんでもない作品であった。「コンビニで働く」という一つの軸を元に、無意識に社会的価値観に沿って生きる人々、それを受け入れら...
大学生の頃、イギリスへ行って聖地巡礼のように好きな作家の出身地や物語の舞台を歩き回った。イギリス文学オタクだった私は何もかもにテンションが上がって、立ち止まってはじんわり世界観に浸り、現地の空気を存分に吸った。 『清少納...
ミヒャエル・エンデ『モモ』の感想を見ていると、多くの人が「時間を大切にしなきゃいけない」「効率ばかり求めるのはよくない」といった時間の概念にまつわるものが多い。かくいう私も、同作品を読んで同じことを考えた。 しかし、最近...
雑誌で紹介されているのを見つけて関心を持ち、読み始めた中島らもさんの『今夜、すべてのバーで』。読んでいる途中から、「なんだかこれは、すごい本だぞ……」と惹かれていき、読み終えた頃には出合ったことに感謝したくなった。 ふだ...
過去の記憶を思い起こすとき、色が鮮明に浮かぶときがある。自分や誰かが着ていた服、食べていた食べ物、建物、どんなものにも色があって、その色のイメージがぱっと思い出されることがある。 『いろごと』は色をテーマにした短歌・短編...
『ドリアン・グレイの画像(肖像)』に登場する美しい少年、ドリアン・グレイは無邪気で純粋で、それゆえに残酷さがある。無邪気さと残酷さは紙一重だなと感じる。 また、美しさに取りつかれる様、人々が外見によって善悪を判断する様が...
尊敬する誰かの言葉を信じて生きていく、それ自体は素敵なことだと思う。私もいろんな人の言葉を胸に生きている。しかし、信じ切ってそれだけしか見えなくなっているとしたら、それはときに自分を苦しめるのかもしれない。 ヴォルテール...
夫婦って、すごく不思議。それまで他人だった誰かと、急に家族になる。そこには恋愛関係とも、友情関係とも違う、新しい関係性が生まれていく。在り方は十人十色、千差万別…… 江國香織さんの小説『スイートリトルライズ』は、瑠璃子と...