世の中の後継者不在問題について考える――『ふむふむ 教えて、お仕事!』

仕事柄、飲食まわりの取材をすることが多いので、よく「後継者不在問題」を聞く。飲食店は後継者不在であることがほかの業界よりも多いらしく、素晴らしい老舗が閉店を余儀なくされてしまう、という話は決して珍しくない。

自分たちで閉めると決め込んだのであればまだしも、閉店せざるを得ないとなると、店側も客側も悲しい。たった一人、その店を引き継いでくれる人物に出会うことすらも難しいのか、と考えてしまう。

業界の端っこで生きている人間としてはどうか、少しでも経営が長く続く飲食店が増えてほしいと身勝手にも思っている。シンプルに好きなお店はずっと続いてほしいし、世の中は雇用機会を失わずに済むし、業界の衰退も避けられる、たとえほんの少しでも。

大げさな、と思うかもしれないけれど、本当に日々考えていることなのだ。

職人の後継者不在問題

飲食店の話がやっぱり私の身のまわりでは多いけれど、後継者不在の問題は飲食業界に限らない。三浦しをんさんの『ふむふむ おしえて、お仕事!』の中では、靴職人の方のインタビューにて後継者の話があった。

三浦 職人さんの世界は、「技術は目で盗むもの」というイメージがありますが、実際のところはどうですか?
中村 いや、私たち、いまでも職人のおじさんに聞きますよ。現役の靴職人って、若くても六十代なんです。金の卵と呼ばれて集団就職してきた世代です。福島出身が多いのかな。製造業はなんでもそうですが、自分の子どもには大学出てきちんとサラリーマンになってほしくて、気がつけば後継者がいない。そこへ私たちが話を聞きにいくわけですから、たくさん教えてくれますよ。

『ふむふむ おしえて、お仕事!』

「気がつけば後継者がいない」という一節が、かなり胸に刺さった。商工サービス系の仕事はやはり、こういうことがあるのだ。

当然、働いている人たちはやりがいを持っているし、私も大尊敬しているが、「自分たちの子どもや孫にはほかの仕事に就いてもらいたい」と考える人も少なくない。ご本人は好きだからその仕事をされているけれど、誰かに継いでもらうとなると話は別なのだろう。

それでも、最近は日本の伝統芸能を外国人の方が引き継いでくれるケースも増えているし、飲食店も親族や従業員に引き継ぐ方法だけでなく、M&Aで第三者に譲るという手法を利用する人も珍しくはなくなった。世の中がアップデートされていく中で、できるだけたくさんの仕事や技が未来へ引き継がれていってほしいと思う。

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食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。