その国の言葉でしかあらわせないこと。エラ・フランシス・サンダース『翻訳できない世界のことば』

「木漏れ日」は外国語で通じないらしいと、誰かから聞いた。木から漏れ出る光ということは示せても、温かみ、穏やかな様子というニュアンスは伝わらない。あるいは、「コストパフォーマンス」。コスパを気にする概念がそもそも海外にはなく、英語のように見えても実は日本ならではの言葉だそうだ。

エラ・フランシス・サンダースの『翻訳できない世界のことば』は、上記のようにその国の言語でしかあらわせない言葉をたっぷりと掲載している。他国の独特な文化を知る良い機会となった。

細やかな感情を端的に言いあらわす言葉たち

日本語にあるようでない、細やかな感情を言いあらわす言葉たちが印象的であった。

例えば、「COMMUOVERE(コンムオーベレ)」はイタリア語で、「涙ぐむような物語にふれたとき、感動して胸が熱くなる」ことを指すという。情熱の国、イタリアらしい言葉だと思った。

日本でも「感動した」という言葉はあれど、その程度やニュアンスを表すのはなかなか難しい。最上級の感動を示したい場合でも、語彙がどんどんなくなった結果、「やばい」とか「すごい」とか抽象的になってしまったりするし……個人的に使いたい言葉、第一位。

あるいはタガログ語の「KILIG(キリグ)」は「おなかの中に蝶が舞っている気分」のこと。「ロマンチックなことやすてきなことが起きたときに感じる」とあり、日本語で言えば、きゅん、とかドキドキとか、擬音語で表されるような気持ちだろうか。端的に言えるとありがたい言葉ではある。

個人的に好きだったのは、ドイツ語の「KUMMERSPECK(クンマーシュペック)」。直訳すると『悲しいベーコン』で、食べすぎが続いて太ることを指すらしい。ストレス発散ややけ食いが想像できておもしろかわいい。言い得て妙である。

風景に名前をつける

国が違えば、風景に感じる趣も異なるのだろう。先述の木漏れ日のように、ただ風景の様子だけでなく、それに伴った情緒も含まれているのではないか。

例えば、スウェーデン語の「MANGATA(モーンガータ)」は「水面にうつった道のように見える月明かり」のことだという。「月明かり」に種類があるとは考えもしなかった。美しいなあと感じる気持ちや何かセンシティブなニュアンスがあったりするのかもしれないな。

また、風景というわけではないが、ドイツ語の「KABELSALAT(カーベルザラート)」。直訳すると「ケーブル・サラダ」でめちゃくちゃにもつれたケーブルを指すそうだ。かわいい!! 日本語にも欲しいんですが!! 絡まったケーブルのいらいらが、やわらぎそう。

土地柄が顕著に出る、時間や距離にまつわる言葉

時間や距離をあらわす言葉は、その土地独自の感覚が出やすいように思う。

例えば、マレー語の「PISAN ZAPRA(ピサンザプラ)」は「バナナを食べるときの所要時間」(p.23)。一般的には2分くらいのことを指すとのことだが、バナナが身近だからだろうか……? 日本で言うなら何になるんだろう……ごはん? お茶碗一杯を食べきれる時間とか?

あるいは「PORONKUSEMA(ポロンクセマ)」はフィンランド語で、「トナカイが休憩なしで、疲れず移動できる距離」、具体的には約7.5kmらしい。トナカイがいる地域ならではの言葉で面白い。動物で距離感を測るのは、日本にはない発想な気がする。

日本語では冒頭で述べた「木漏れ日」も入っていたし、個人的に好きだったのは「積読」。まあ確かに、買った本を読んでいないことに罪悪感を覚える感覚は、日本語っぽいかもしれないなあ。

単に外国語を知るというだけではなく、その土地の風習や考え方込みで学べて、とても面白かった。

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