狂おしいほど好きな店はあるだろうか? 私は正直、好きな店は数あれど、熱狂的に愛している店はまだ、ないかもしれない。飲食店界隈を取材している身としてはちょっと悔しく、ちょっと寂しい。
『狂おしいほど焼鳥どんが好き。』は、とにかく『焼鳥どん』への強い愛が詰まった一枚(一冊?)である。四つ折りになったそれを半分開けば、アツい同店への想いが綴られており、すべて開くと、一面に大きく4つの「好き」ポイントが列挙されている。さらに裏面には店舗案内(『焼鳥どん』は、どうやら店舗展開しているらしい)。店への誘導も完璧だ。
文フリでZINEのつもりで買ったわけだが、もうこれは自主製作の本というよりは広告、いや、店舗案内? 店のレジ前に置いてあっても不思議ではない。もし宣伝をしたいと思っている飲食店がいたら、お金を出してでも作ってもらいたいクオリティだと思う。
文フリでは作者の方が販売をしていたのだが、執筆したご当人は、「あまりに好きすぎて自主制作していたら店からも公認になった」と言っていて驚いた。すでに店に愛は伝わっているようだ。
それにしても、こんなに愛せる店があるなんて羨ましい。どうしたらそんな店に出会えるのだろう?と思ったら、最初のコメントにその答えがあった。
思えばどんなお店もそうなのかもしれない。
うまいだとか安いだとか。
その空間で過ごした大切な時間とか。
この愛おしさは、
通った分だけ生まれるものなのかも。
でも、私が初めてそれを感じたのは
「焼鳥どん」だった。
『狂おしいほど焼鳥どんが好き。』
お店の料理やサービス、雰囲気などお店を好きになる要素はいくつもあるが、それだけでなく何度も通って、少しずつ自分の思い出の一部になっていけば、愛おしさもわいてくるだろう。私の中にも、そんなふうにふらりと行きたくなるお店はいくつも思い浮かぶ。
正直、ここまで客に愛されていたら、飲食店冥利に尽きるんじゃないだろうかなんて、勝手に思ってしまう。そして、こんなにお店を愛してくれる人がいる限り、飲食業界に希望はある。
ちなみに、『焼鳥どん』は500円以上の料理はないらしく、焼鳥はなんと80円(冊子制作当時の価格)。それなのにどの写真もおいしそうで、そんなに安価とは信じられない。見るたびにお腹が空いてきてしまう。
私もいつか、『焼鳥どん』に行ってみたい。そして、80円の焼鳥をほおばり、ビールを飲むのだ。
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