料理家・有元葉子さんのエッセイ『毎日すること、ときどきすること。』では、彼女が日々行っているルーティンや小さなこだわりが掲載されている。中でも料理やキッチンに関するアイデアで、気になったものを記録しておく。
スキマ時間を上手く使う
毎日、あるいはときどき行うさまざまなルーティンの中で、特に印象的だったのはスキマ時間の使い方。ちょっと空いた時間にやっていることがさらっと記されており、「そんなことできるんだ!」と驚くことも多かった。
すぐに出来そうなものは、例えば、片づけのタスク。とにかく少しの時間を活用して整理整頓を行うようにしているとのこと。
出かける前でも、30分、1時間の空きがあれば、「冷蔵庫の1段だけ整理しよう」「この戸棚を30分だけ片づけよう」って、そんなふうに場所と時間を限定して片づけるのです。でないと大変。ここを片づけるために、あっちを片づけないと……なんて家じゅうをひっくり返して、一日中片づけていることになる。
『毎日すること、ときどきすること。』p.52
私は何かと作業を区切りがち。「これのときはこれをやる!」と決めることが多いが、それだと正直、苦手なことをやる際のハードルが自然に上がってしまう。だとしたら、やはり有元さんのように少しのスキマ時間を活用して、掃除していきたい。
そのほか、空いた1時間を活用して、ケーキを焼く、というエピソードには驚いた。仕事が午前と午後にまたがった際、昼どきにスタッフが外食に出て、お腹が空いていなかったので有元さんは家に残った。そのときに時間が空いたので、ささっとケーキを作ったのだという。
1時間あればお菓子が焼けるんです。道具使いの工夫や、簡略化したレシピは、こんなふうに少しの時間でも“豊かさ”を生み出したくて考えたもの。時間と道具と自分をうまく使うレッスンを、私はときどき密かにやっているのです。
『毎日すること、ときどきすること。』p.69
作ったことがなければ、「そんな短時間でケーキなんて作れるわけない」と思い込んでしまうが、なるほど、スキマ時間の活用には意識とトレーニングが必要ということだろう。
この時間にはこれができる、とシミュレーションしてみたり、実際にやってみたりすることが重要といえそうだ。
「なんだか使いにくい」を改善する
キッチンまわりは動線が命……と思いつつも、ちょっと使いにくいところを放置してしまいがち。有元さんは「『なんだか使いにくい』と感じたら、どうして使いにくいのかを考えて、使いやすく改善する」(p.54)という。
中でもパウダー缶の開発エピソードは、この改善する考えが生かされているように思う。
市販のパウダー缶は最初はぱっと粉が出ても、二度目、三度目はなかなか出ないことが多いため、メーカーに「二度目も三度目も、パッと出るパウダー缶を作ってください」(p.104)と依頼したそうだ。
そして時間をかけて3年後、ストレスのないパウダー缶が完成。その後も気づかないレベルの改良を繰り返し続けているのだという。
なんだか使いにくいと感じる物やスペースが、我が家にも結構ある気がする。作業中に気が付いたら、とにかくメモして改善方法を考えてみることにしよう。
難しい料理も、楽しく挑戦する
料理家さんのふだんの料理、と聞くとなんとなく手の込んでいるもの、と思ってしまう。そして、「ズボラな私にはまねできないかも」と勝手に壁を作っていた。
しかし、有元さんのルーティンを見ていると、手が込んでいるとかいないとかでなく、シンプルに自分のペースで料理を楽しんでいるように感じた。そしてそのマインドは、とても参考になる。
例えばぬか漬け。ぬか漬けといえば、手のかかる、大変なものというイメージがつきもの。
私も挑戦してみたいものの、かびさせてしまうのではとなかなか手が出せずにいる。しかし、本書はそんな不安を消し去ってくれた。「失敗も何も、ぬか漬けに答えはないのです。ぬか床は生き物ですから、うまくつきあうだけです」というのだ。
あるいは、「火」に関してのお話。火を使う方法はガスや電気以外にもいろいろあって、さらにその道具によって料理の風味に変化が出る。とはいえ、家でバリエーションは出せないと思っていた。
ところが、本書によればコンパクトな炭火焼のコンロなるものがあるらしい。合羽橋で売っているというので、私もぜひ購入してみたい。できないと思わず一旦調べて見ることもまた、大事なことだ。
失敗しても諦めず自分のやりやすい方法を探し出すこと、やってみたいことはとにかく調べて挑戦してみることが、料理の幅を広げるコツなのかもしれない。
ふだんはレシピでお世話になることが多いが、こうした何気ないルーティンもまた、参考になることがたくさんあった。私も有元さんのように、年齢を重ねても暮らしを自分らしくカスタマイズし、楽しんでいきたい。
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