いがらしろみ『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』#3 Romi-Unie Confiture、ジャムづくり、そして仕事に対する考え方



『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』は、お菓子研究家・いがらしろみさんがお菓子研究家となり、ジャムの専門店『Romi-Unie confiture』を開くまでの道のりを描いた一冊。

ジャム専門店『Romi-Unie confiture』を立ち上げるまでになったいがらしさん。本書にはジャムに対する想いはもちろんのこと、立ち上げるまでの物件選びや内装づくりのこだわり、そして2005年の発売当初に考えていた店のこれからのことが記されている。

店を開き、営業していくリアルな姿を見ることができるため、ジャム好きはもちろん、今後お菓子やジャムの店を出店したい人にとってもかなり役立つ内容となっている。

カントリー風でない、洗練されたジャム屋

もともとジャム屋を経営しており、出店の知識や経験もある「セルフィユ」長澤社長の力を借りて、いがらしさんは早速、店づくりをスタート。

物件は住んでいて気に入っている鎌倉。以前居酒屋だった場所を、居抜きで契約した。冷蔵庫をそのままもらえたことや、水回りの位置が理想に近かったという。

内装は『ノートル・シャンブル』のような“流れている空気がまんまフランス”の雰囲気にしたかったそう。ここで意外だったのが、「カントリー寄りにならない」ように心掛けたということ。

私はジャムや特有のカントリー的な、赤いチェックのフワフワとした感じや、「田舎のおばあちゃんがコトコト煮ました」的な素朴なだけのお店には絶対したくなかったのです。ジャム屋のそういう画一的な古いイメージを一新するような洗練されたお店にしたかった。

『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』いがらしろみ

実際『Romi-Unie confiture』の店内は温かみがあるが、洗練されたスタイリッシュな印象も受ける。

CouleurによるPixabayからの画像

イベントとは違う、店でジャムを売る難しさ

いがらしさんはこれまでイベントでもたくさんのジャムをつくってきたわけだが、店舗営業でのジャムづくりはまったく勝手が異なるようだった。まず、店舗に並べるには量産しなければならない。フルーツもキロ単位で煮なければいけないし、それに伴って調理道具も業務用の大きなものを取りそろえる必要がある。

さらにジャム専門店であるからには種類も豊富に用意しなければならない。いがらしさんはなんと50種類置くことを目標にし、毎日スケジュールを立て、朝から晩までキッチンに立ち続けたそうだ。

また、店で売るからにはパッケージも必要だ。ロゴやタグ、ジャムを入れるバッグのデザインを依頼し、必要な素材を揃えなければならない。ほかにも、スタッフを雇う、ウェブショップをオープンさせるなど、いがらしさんがやりたいと感じる店づくりに必要な作業は多く、大変さを伴う。しかし、忙しい中でもこだわりを捨てずに向き合ったからこそ、今の『Romi-Unie confiture』になっているのだろうと感じる。

RitaEによるPixabayからの画像

「好き」を仕事にする、いがらしさんの考え方

現在も人気が高く、愛され続けている『Romi-Unie Confiture』だが、それは本書を読んでいてもわかる、いがらしさんの人とのつながりを大切にする想いや、こだわりを突き通す芯の強さが大きく起因していると思う。

販売しているジャムについて、いがらしさんは以下のようにコメントをしている。

うちの商品を置きたいという販売店からの問い合わせはとても多いのですが、今までお付き合いのあった人や、私が素敵だなと思ったお店からの依頼以外はお受けしていません。私たちが目指しているのは、「どこでも買える」商品ではなくて、私たち作り手が、お客さんとコミュニケートしながら買っていただけるという環境が望ましいと思っているのです。

『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』いがらしろみ

そんないがらしさんが大切にしている考え方が、本書からもいくつかうかがえる。例えば、仕事をするとき。どんな仕事であっても「自分はなぜそれをやりたいのか」をしっかり考える必要があるという。あるいは、仕事においては「等身大でないことはやらない」ことにしているというのも、印象的だった。

「これは自分らしくない」「これは自分に合う」が私の基準なのですが、その理由を説明するのは難しいですね。ひとことでいえば感覚でしょうか。それは一定の基準があるわけではなく、そのときそのときで選び取るものが違っているような気がします。

『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』いがらしろみ

そして、自身で道を切り開き、やりたいことを仕事にしてきたいがらしさんだからこそ、これからお菓子づくりはもちろん、さまざまなことに挑戦する人たちへの強いメッセージもうかがえた。

どんなことでも「こんなものじゃないの」と適当にこなすだけでは、その程度のものしか見えてきません。自分の心が動いたところを掘り下げて、深く追求していくことで今まで想像しなかった素晴らしく居心地の良い世界を見つけられると思うのです。

『お菓子の日々、ジャム屋の仕事』いがらしろみ

この一冊を通して、『Romi-Unie confiture』が開業するまでのいきさつやいがらしさんがどんなキャリアを歩んできたのかを知ることができて、とても面白かった。しかし、もっとも印象に残ったのは、やはりいがらしさんの仕事に関する考え方だった。一つひとつの仕事に対して真摯に向き合い、これが本当に自分が好きなことなのか、自分に合っていることなのかを丁寧に問いかけてきたからこそ、今の道があるのだろう。

お菓子づくりを仕事にしたい人はもちろん、仕事に悩んでいる人や、やってみたいことがあるけどなかなか勇気が出ないという人にも、ぜひ読んでもらいたい。



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たけの
フリーの編集者・ライター。食関連の書籍・雑誌・Webサイトで活動中。祖父母は定食屋、両親はレストランを経営。飲食店一家に生まれ、食の虜に。美味しい飲食店や料理、食文化・歴史・ニュースなどを発信しています。