中国の家庭料理はシンプルで経済的なものも多い――『料理の意味とその手立て』

中華料理と言えば、中華鍋とスパイス、たっぷりの油、そして勢いのある強火でザッと豪快に炒めるイメージ。ところが、料理家のウー・ウェンさん著『料理の意味とその手立て』によれば、それは飲食店の味であり、家庭ではもっとシンプルで、経済的なものが作られているという。

言われてみれば、日本だって、海外では寿司・天ぷら・すき焼きのイメージが強いかもしれないが、どれもほぼ、飲食店の味である。家庭ではより簡易的な炒め物や煮物が好まれているし、食材だってスーパーで手頃に手に入るものばかり。ここにきて初めて、私は「中国の家庭料理」というものを知ったのであった。

特別なスパイスはなくてもいい

中国料理と言えば、麻辣や八角、花椒などのスパイスを多く使うイメージがある。しかし、日常的に使うものではないそうだ。塩とこしょうだけしか使わない料理も多いのだという。

大衆中華のような店で、海老と青菜の塩炒めのようなものを食べたことがあるが、あれは確かに、特別なスパイスを使っているようなものではなかった。言われてみれば、私だってそういうシンプルな中華を食べたことがあったのだ! 家庭で作りやすい味付けは、日本も中国もあまり変わらないのかもしれない。

シンプルで経済的な料理も多い

店で提供される中華料理はボリュームがあって、食材も多様なものが使われていて、場所によってはかなり華やかでもある。しかし、家で食べるとなればシンプルで経済的なものになるのも納得がいく。

『料理の意味と~』では小麦粉料理の話が綴られていた。

ふつう、北京の家庭でいちばんよく作るのは小麦粉料理です。水餃子をはじめとして、いろんな餅(ビン)や麺、焼売や包子(パオズ・肉まん)、饅頭(マントウ)があり、そのほとんどをみんなお家で自分たちで作って食べるのです。

『料理の意味とその手立て』p.172

小麦粉は手に入りやすい主食の一つなのだろう。麺類も、確かに中国のイメージがある。それにしても粉ものをあまり作らない私としては、家で焼売や麺を手づくりして食べているなんてすごいなあと尊敬してしまう。私も日頃から作るようにしたいなあ……

家庭の火力で作れるもの

中華鍋を振って強い火力でさっと炒める……というのはやはり飲食店ならではの技術。家庭であれば火力も低く、大ぶりの鍋もないことが一般的のようだ。ここも、日本の家庭と変わらないだろうなあ……中華料理店みたいに強い火力で鍋を振り続けていたら、ガス代も大変そうである。キッチンも汚れちゃうし。

言われてみれば当たり前のことなのに、なんだか新発見をした気持ちになった。『料理の意味とその手立て』で今、中国の家庭料理にちょっとずつ挑戦してみている私である。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。