「沖縄の食文化」を学ぶための、個人的参考書。郷土料理や独自の食品を楽しむ

沖縄に縁があり、定期的に訪問するようになってから、沖縄料理も沖縄ならではの食材や食品も、大好きになった。それゆえに、もっと知りたいという気持ちが先行し、しょっちゅう沖縄の食文化にまつわる本を読んでいる。

まだ見ぬ沖縄料理を求めて……

食べても食べても新しい食材や調理法を発見してしまうのが、沖縄料理かもしれない。何年経っても「これはなんだ!?」という新鮮な驚きがある。自分で経験したことも多いが、本からもまた、多くの知識を得た。

おきなわいちば

沖縄のカルチャーを季刊で発信する雑誌『おきなわいちば』。その64号では、「時間が美味しくする料理」と題して、手間暇をかけて作る沖縄料理の魅力を存分に紹介している。もともと知っていた料理の再発見もあれば、まったく知らない料理に出合うこともできた。

たとえば、ターンム(田芋)を茹で、豚肉やしいたけ、カステラかまぼこと混ぜ合わせる「ドゥルワカシー」や、卵と赤く色づけた落花生で作るお菓子「チールンコウ」などはここで初めて知った。

保存食ではスーチカーや冬瓜漬、スクガラス、あんだんすーなどが紹介されていた。思えば、沖縄料理は確かに、保存食も多い。本書によればそれらはどれも、沖縄の歴史とともに育まれてきたようだ。

過酷な気候の下、家族が生きるための食糧を確保しようと、先人たちは知恵を絞り、工夫を凝らし、できるだけ多くの食材を保存することに努めたはず。また、中国から伝わった料理や技術を、手に入る食材で沖縄流にアレンジさせているのも興味深い。

『おきなわいちば』64号 p.67

全国各地にはもちろん、さまざまな郷土料理がある。ただ、沖縄はほかの地域に比べて、独自の文化の要素が強いように思う。それが沖縄の食文化の、大きな魅力の一つだろう。

おいしい沖縄

『おいしい沖縄』は、沖縄の食にまつわるエッセイのアンソロジー。馴染みある食の話も多かったが、まだ見ぬ食材や料理もまた、多く記されていた。

例えば、向田邦子さんの「沖縄胃袋旅行」にて、「きっぱん」というお菓子を知った。本書によるとそれは「平べったい大き目の饅頭で、まわりは白い砂糖がけ、アンは細く切った果物の砂糖漬」で「猛烈に甘くほろ苦かった」(p.13)とのこと。もうほとんどの店で作っておらず、かなりレアらしい。実際調べてみると、今は『銘菓継承 謝花きっぱん店』でしか作られていないそう。向田さんが訪問したのも同店のようだ。

ホテルまで待ち切れず、タクシーの中で開き、端を折って食べてみた。物凄く甘くほろ苦い。昔と同じ味である。四十年の歳月はいっぺんんい消し飛んで、弟や妹と若かった父のまわりに目白押しにならび、茶色の皮のカバンから手品のように出てくる沖縄土産を待つ十二歳の女の子にもどっていた。

『おいしい沖縄』「沖縄胃袋旅行」p.27

あるいは、島豆腐の話も興味深い。普通の豆腐と何が違うのかよく知らずにいたが、下川裕治さん「非合法豆腐、沖縄の島々に君臨す」にて、以下の三点が違う、という話があった。

一、島豆腐は水に浸した大豆をそのまま擦り潰して絞り、その後で火を通す。対して本土の豆腐は擦り潰し、火を通してから絞る。
二、島豆腐は最後にラードを少し入れる。
三、ニガリの代わりに海水を入れる。

『おいしい沖縄』下川裕治「非合法豆腐、沖縄の島々に君臨す」

作り方がぜんっぜん違う!!!! 特に二のラードは衝撃であった。豆腐にラード……とはいえ、実際に購入している島豆腐はにがりを使っているようであるし、ラードは入っていなさそう。時代や地域によって作り方や使う素材が異なるのかもしれない。

余談だが、宮古島では「島の豆腐屋は必ず養豚業を営んでいた」(p.63)という話もあった。豆腐を作るときに出るおからが、豚の餌として使われていたのだという。沖縄は豚肉を多用する食文化だとは思っていたが、こんなところで繋がっていたとは……ラードを使うのも納得。

レシピ本を参考に沖縄料理を楽しむ

家で沖縄料理を楽しむ際に、地元で制作されたレシピ本はかなり重要な手掛かりとなる。私がお世話になっているのは、以下だ。

おうちでうちなーごはん!

可愛らしいイラストに一目ぼれし、購入。レシピ本であり、沖縄食材&料理の解説本であり、イラスト集でもある。

沖縄料理に欠かせない、三枚肉の茹で方やだしの取り方などの下ごしらえから、「チャンプルー」「イリチー」など基本料理の作り方、食材別、季節別の料理とレシピの紹介、食材の特徴まで、「うちなーごはん」の基本がしっかり紹介されている。

もっとも驚いたのは、全ページがイラスト、手書き文字から成っているということ。かわいい!!! そしてすごすぎる!!!! おかげでページを捲るのが楽しくて楽しくて仕方がない。また、珍しい沖縄の食材、料理、作り方の一部がイラストとなっているのも、とってもわかりやすくて助かった。

私にとって沖縄の食材や料理、食品は、親しみやすいのに新しい発見に溢れていて、奥深い存在だ。きっとまだまだ知らないことがあるのだろうなあ……

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。