イタリアのシチュー「ストゥファート」。 肉を“だし”として捉える、肉食文化の奥義

細川亜衣さんの『料理集 定番』にて「ストゥファート」の話があった。初めて聞いた名前だったが、どうやらイタリアのシチューを指すらしい。と言っても、日本で食べられているものとは、若干作り方が異なるようである。

もともとは、鍋に肉の塊と香味野菜などを入れてふたをし、薪ストーブの上でゆっくりと煮込んだものを指したが、いまはガスの火で煮ることも多くなった。牛肉や仔牛肉で作ることが多いが、私が初めてイタリアへ渡った年、最初にお世話になった家では、庭で飼っている兎や鶏を絞めて、シチューを作った。

『料理集 定番』p.132

なるほど、日本で食べるシチューは基本、肉は一口サイズでどちらかと言うとスープの部分を楽しむイメージがある。しかしストゥファートは、素材そのものとそこから出るだしを楽しむ、という印象だろうか。

同じ味付けでも、使う肉で味わいが変化する

本書によれば、細川さんが食べたいくつかのストゥファートは基本の作り方が同じで、肉の種類をそのときどきによって変えるそうだ。「まったく同じ味つけでも、肉が変われば味わいは別のものになる」(p.132)といい、肉の旨味が重要な決め手となっている。

新鮮だったのは、「肉は食べるためでもあり、だしの素にもなる」という考え方である。

日本のだし文化は、私も大好きなかつお節や昆布、鶏ガラ、野菜の切れ端など、「だし」として使うために用意された専用のものを使うことが多い。しかし、忘れてはならないのは、その多くが食材としても楽しめるものであるということ。

野菜の旨味が染み出たスープが美味しいように、肉の旨味もまた、大事な味の要素になるのである。肉を「だし」としても捉えて活用する。それは私にとって美味しさの幅が大きく広がるアイデアであった。

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