本の制作に欠かせない、「校正」「校閲」。私自身も何度かお世話になり、その丁寧な職人技を目の当たりにしてきた。近年はメディアに取り上げられることも増え、出版業界以外でも認知されている印象だ。
では改めて、校正・校閲とはどんな仕事なのか? 実際にどんなふうに業務を行っているのか?彼らのリアルな仕事ぶりや、実際の手法を教えてくれた本たちを、まとめておく。
校正者・校閲者の仕事ぶりを学べる本
「校正者」「校閲者」のリアルな仕事ぶりを学べる本たちは、こちら。
校正のこころ 増補改訂第二版: 積極的受け身のすすめ
校正業務の具体的な手法から、校正の原則・役割・心構えをまとめた一冊。誰かの文章を「より正確でより効果的に相手に届くようサポートする」仕事だといい、間違いを正すだけに終わらない校正の重要性を語る。自分の価値観や感覚とまったく違う文章を読み込む仕事だからこそ、それらを受け入れる「積極的受け身」の姿勢が大切、という話が心に残った。
文にあたる
校正者・牟田都子さんの、原稿と向き合う日々を綴ったエッセイ。「校正者は読んでも読んではいけない」とし、校正者ならではの原稿の“読み方”を、自身の考え方や感じたこととともに語っている。校正への愛と熱意がたっぷりと詰まっていて、読み心地が良い。
カンマの女王
人気週刊誌「ニューヨーカー」のOK係(=校正係)のノンフィクション。校正業務の難しさや醍醐味を、実体験とともにまとめている。辞書の活用方法、間違いをどこまで正すべきかといった日本と共通のテーマのほか、性別で分かれる名詞や代名詞、カンマの付け方など、英語特有の校正にも触れていてユニーク。
校正・校閲の手法を学べる本
校正・校閲の特殊な知識を学べる本は、こちら。
校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術
「毎日新聞校閲グループ」が校正する中で実際に見つけた「間違い」を、対処法とともに解説。日本語の醍醐味や難しさを味わいながら、リアルな校正業務を学ぶことができる。一つ見逃しただけで「0点」という厳しい判定の中で、細かな間違いを見つけだす技術に圧巻。
校正記号の使い方: タテ組・ヨコ組・欧文組
私が「校正」にまつわる本で初めて手にしたのが、本書。校正時に使う特有の記号をまとめており、校正者はもちろん、編集者やライター、デザイナー……多様な職種がお世話になっている一冊といえる。修正点を的確に伝えられる校正記号を、活用例とともに丁寧に解説している。
校正・校閲の仕事を知るたびに、その技術の素晴らしさに驚かされる。「誤字・脱字の確認なら機械に任せればいい」という人もいるし、一部はそうすればよいかもしれないが、校正業務は当然、それだけではない。「そもそも本当に間違いなのか?」「間違いだとすれば、どのような表現が適切なのか?」を徹底的に検討していくのである。これはやはり、人にしかできない仕事なのではないかと、私は思う。
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