村田紗耶香『コンビニ人間』。無個性と思われるものの個性と、価値観の押し付けについて考える
コンビニで働く人の話かなあと思い、読み始めた。確かに、そうだった。そうだったが、想像の斜め上を行くとんでもない作品であった。「コンビニで働く」という一つの軸を元に、無意識に社会的価値観に沿って生きる人々、それを受け入れら...
コンビニで働く人の話かなあと思い、読み始めた。確かに、そうだった。そうだったが、想像の斜め上を行くとんでもない作品であった。「コンビニで働く」という一つの軸を元に、無意識に社会的価値観に沿って生きる人々、それを受け入れら...
加藤千恵さんの短編・短歌集『ハッピー☆アイスクリーム』、高校生の頃に読まずに済んで本当に良かった。もし高校生の頃に読んでたら、あまりの共感に爆死していたと思う。それくらいに甘酸っぱい高校生の青春が、詰まりに詰まっている。...
クラリッサ(=ダロウェイ夫人)を取り巻く1日を記した小説『ダロウェイ夫人』。彼女がパーティを開くために準備をする中で、自分の暮らしや人生やパートナーについて思いを巡らせ、自分なりの価値観を示していく。 また、クラリッサが...
そこはかとなく漂う不穏な空気。それをじわりじわりと感じながら、ときに一生懸命気づかないふりをしながら、読み進めていく。あちこちにちらばる気づきたくない伏線を、少しずつ回収して…… 『ボトルネック』は、主人公・嵯峨野リョウ...
『海に住む少女』を読んでいるとき、ずっとふわふわとどこかをさまよっているような気分だった。とにかく世界観がとても不思議なのである。生きているもの、死んでしまったもの、人間、動物、概念までもが登場し、優しい文章で綴られてい...
※画像はイメージ 原田マハさんの小説『デトロイト美術館の奇跡』。デトロイト市財政破綻のため、デトロイト美術館のコレクションが売却されるかもしれない。その大きな事件を一つの柱にして、美術館に訪れる人やコレクター、スタッフな...
偶然「ウィンダミア卿夫人の扇」を読む機会があり、初めてオスカー・ワイルドの劇作品に触れた。その後、同時収録されている「サロメ」「まじめが肝心」を読み、見事にその面白さに取りつかれた。 特に喜劇。ワイルドに喜劇作品があるな...
梶井基次郎の短編集『檸檬』は、その多くが漠然とした薄暗い気持ちと、それから逃れようともがく様子が描かれている。「なんとなくしんどいな」というふわっとした薄暗さは、日常の小さなストレスや気候や人間関係や、さまざまなものが積...
吉本ばななさんの小説『彼女について』は「魔術」「呪い」「宗教」などの目に見えないものがキーワードとなっている。目に見えないものを信じること自体はもちろん悪ではない。しかし、それに振り回され、苦しみ、悲しい事件が巻き起こっ...
『ドリアン・グレイの画像』に登場する美しい少年、ドリアン・グレイは無邪気で純粋で、それゆえに残酷さがある。無邪気さと残酷さは紙一重だなと感じる。 また、美しさに取りつかれる様、人々が外見によって善悪を判断する様が描かれて...