特にこだわって読んだ記憶はないのだが、気が付けば動物が主役であったり、動物とのやり取りをテーマにしたような作品をよく手に取っている。人間同士では表現できないコミュニケーションや風刺、ストーリーなどが展開されるのが、好きなのかもしれない。
フルーツバスケット 高屋奈月
人生で最も好きな少女漫画は『フルーツバスケット』! 大人になっても何度も読み返し、愛蔵版まで手に入れてしまうほどだ。
女子高生・本田透が不思議な美形の一族「草摩家」と出会い、ひょんなことから居候を始める。ところがあるとき、彼らのあるとんでもない秘密を知ってしまう。異性に抱きつかれるとそれぞれ十二支の動物に変身してしまうのである。
ファンタジーなあらすじだが、彼らはこの「絆」、あるいは「呪い」と呼ぶものに苦しめられていて、向き合ったり、戦ったり、ときに逃げたりしながら必死に生きている。コミカルな面白さもたっぷりありつつ、泣けたり、考えされられたりする作品となっている。
かのこちゃんとマドレーヌ夫人 万城目学
小学生のかのこちゃんとその飼い猫・マドレーヌ夫人の物語。子どもの視点と猫の視点が交互に現れ、不思議で愉快な世界観を繰り広げている。笑ったり、ふむふむと感心したり、しまいには目頭が熱くなったり……気軽に読めるのに、感情がぐらぐらと揺れ動いた一冊。
マドレーヌ夫人とかのこちゃんの暮らしぶりは全く異なるが、奇妙な出来事をきっかけに深く交差してゆく。猫と人間という別々の生き物でありながらも、彼女たちは互いの気持ちを慮り、彼女たちなりにコミュニケーションを取っていく。フィクションなのに、この世のどこかにマドレーヌ夫人やかのこちゃんがいるような気がしてしまう。
BEASTARS 板垣巴留
『BEASTARS』1巻の表紙内側にて、作者・板垣巴留さんは同作を「これは動物漫画のヒューマンドラマです」と語っている。言い得て妙、本当にそうなのである。初めて読んだときの衝撃は忘れられない。この作品は動物について描いている。しかし、現実世界に生きる私たち人間のことを描いているのでは、と思う場面も多々ある。
物語の舞台は、動物たちが通う全寮制のチェリートン高校。草食動物と肉食動物がルールを守って生活していたはずが、草食動物が殺害される事件が起こる。校内にいる肉食動物が「食殺」した可能性が高いとされ、草食動物と肉食動物の間に亀裂が入る。彼らは共存できるのか、できないのか? 本能と理性の間の戦いや絆が描かれる。
草食獣と肉食獣は食われる・食う本能の関係がありつつも、友情や愛情によって連帯し、支え合って社会を作っている。私たち人間同士は直接的に「食う」「食われる」関係はないが、本能や欲、立場や属性と別に、友愛によって関係性を作り出そうとするところは同じである。本書を読むたびに「私たちの現実の世界でもいえることだな」と感じる。
ポテトスープが大好きな猫 作テリー・ファリッシュ 絵バリー・ルート
『ポテトスープが大好きな猫』は、テキサスに暮らすぶっきらぼうなおじいさんと、マイペースな猫の物語。
二人はコミュニケーションを多く取るわけではないが、優しい絵と描写からおだやかな関係性が伝わってくる。おじいさんは猫のことを気に入っているし(ただし、そんなそぶりはほとんど見せない)、猫はおじいさんの作るポテトスープが好物だ。
ある日、ちょっとしたことがきっかけで、行き違いが生じてしまうのだけれど……ふたりのそっけなくも愛のあるやりとりにほっこりする。「お前は今のお前のままでいいんだからさ」と猫に語り掛けるおじいさんが好き。
動物がテーマの作品は心が温まるだけでなく、いつもと違う視点で物事を考えられたりして、私にとって有益な発見も多い。これからもいろんな作品を楽しんでいきたい。
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