いつか家に活版印刷の機械が欲しい。最近は家でできるものも増えているから、家で自由に名刺をつくったり、ちょっとしたメッセージカードをつくったりして遊びたい。そんなことをずっとずっと考えている。
三浦しをんさんの『ふむふむ おしえてお仕事!』では働く女性にインタビューを行っており、そのなかに活版技師のお話があった。仕事の話はもちろん、具体的に自宅で使える活版印刷機「Adana-21J」の解説もあって興味深かった。
取材(2007年)の時点で、「Adana-21J」は45万450円。活版技師・大石さんによれば「現在のデジタル機器よりもよっぽど頑丈なので、メンテナンスさえすれば一生もつと思います」とのこと。
うーん、確かに高いかもしれないけど、家に置けるサイズで一生使えるなら、良いかもなあ……悩ましい問題である。ちなみに、「Adana-21J」は生産終了しているものの、別の改良版があるようなので、気になる……
小型の活版印刷機は、すべてを自分の手でコントロールしてものづくりに励むことができるのである意味、究極のナルシズムを満足させる世界なんですよ。年賀状やカードを印刷したり、好きな小説や詩を好みの活字で組んで、装本も自分でやったり。
『ふむふむ おしえてお仕事!』
もちろん、自作の文章や絵を、自分のデザインで組んで印刷する人もいます。
ああ、欲しい。いつか、いつか。自宅に活版印刷機があるところを想像しつつ、自分の財布と相談している。
活版とともに、言葉を楽しむこと
ちなみにもう一つ、このインタビューで心に留めておきたいことがあった。
活版印刷をブームで終わらせずに、一つの印刷の選択肢として残るように、「活版でなくても成立するような作品を作らないといけないんじゃないか」という話だった。
わざわざ手間をかけて活版にするほどの言葉なのか、という自省は持っていたいなあと思いますね。テクスチュアや組みかたの技巧、そういう表層的な幻惑とは関係なく存在するのが、言葉本来の力というものですよね。活版で印刷するのに耐えうる言葉を持ちたいと願っています。
『ふむふむ おしえてお仕事!』
いつまでも活版を楽しむには、おそらくそれに伴って言葉を楽しむことも必要になる。仮にも編集者とライターを名乗っているのだから、「活版で印刷するのに耐えうる言葉」を大切にするという本質を忘れてはいけない。
活版印刷って確かに、どうでもいい言葉でも何となく重厚感が出そうだから、適当な言葉を当て込んでも雰囲気は出そうだ……それはそれで面白そうだけど、長く長く、活版印刷を楽しみたいから、本質は大事にしていこう。
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