『BOOK BAR:お好みの本、あります。』杏・大倉眞一郎。本の四方山話ラジオを読む

杏さん、大倉眞一郎さんが本を一冊ずつ持ち寄って四方山話を行うラジオを収めた『BOOK BAR:お好みの本、あります。』。それぞれが本を紹介するだけでなく、その本から関連すること、ほとんどしないことまで、ゆるりとトークしている。

話がどこまでも広く、ときに深く広がっていくのが面白く、読みながら勝手に、二人のおしゃべりに参加したような気持ちになったのだった。

読んだ本の感想を一緒にしゃべっている気持ちになる

本書で紹介されている本は、全部で50冊。読んだことのある本もいくつかあり、その感想を読んでいるときの私は、まるで三人目のラジオ参加者である。「わかる!」「そうなんだ!」などとリアクションしながら読み進めてしまった。

例えば、ヴィカス・スワラップの『ぼくと1ルピーの神様』は、私の場合、大学の図書館でたまたま手にした本だった。

映像化(『スラムドッグ$ミリオネア』)のことも知らずに読んで、「これは面白いぞ!」と思ったのに、読んでいる人が周りにいなくて感想を話せなかった記憶がある。

これは大倉さんがご紹介されていた。「書評を見てすぐ買おうと本屋に行ったらなくて、ネット書店でもずっと売り切れてて。業を煮やして出版社まで電話して、『いつ第2刷出るんですか』と問い合わせたりして、ようやく手に入れた本なんですけど、爆発的に面白いんですよ!」と語っていて、「そうそう!」と共感したりして。

ただ、著者のヴィカス・スワラップが発刊当時、政府の外交官であったことは本書で知った。政府に対して批判的な一面もあるし、それを踏まえて再読するとより面白そうである。

ほかにも、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は「小説好きの方のための小説」として紹介されている。

同世代の女性に「この本読んだほうがいいよ、ちょっと泣いた」と紹介されて読みました。先日も、アートパフォーマンスで知り合ったイギリス人の女性が、もうわんわん泣きながら読んだって。ちなみに僕は泣きませんでした。泣きませんでしたが、心が荒野になったような、あまりの空虚感の中に、ぽんと置かれたような、そんな気分になる本ですね。

『BOOK BAR:お好みの本、あります。』p.72

ちなみに私も泣かなかったけれど、表面に出なかっただけで心はかなりぐっときていて、しばらく放心状態になったことは覚えている。「空虚感の中に、ぽんと置かれたような」は私が感じたことにかなり近しい言語化のように思えた。

えっ、そんな本があるの? と驚く

この本を読んだ理由として、「何か、面白い本が知れるかな」という思惑もあった。しかし、思った以上に「え!? そんな本あるの!?」と驚くような、多様な本が紹介されていた。

特に気になったのは、鈴木尚さんの『骨が語る日本史』。杏さんによれば「江戸時代と戦国時代のお墓から発掘された骨に肉づけをして、そこから、病気や体つき、骨格を検証した」話だといい、そこまで難しくなく、面白く読めたそう。

「骸骨を見慣れてくる本」(p.50)って、そんな本ある……? 読んでみたい。

あるいは、宇江佐真理さんの『アラミスと呼ばれた女』。主人公のお柳は通訳の仕事をしている中で、男装をしているそうだ。それは、当時の価値観が如実に表されているということなのだろう。

やっぱり通訳は男性じゃないといけないからじゃないでしょうか。私はこの本を、最初単行本で読んでいて、架空の女性の話だと思っていたんです。でも今回文庫を改めて読んで、実際にいたかもしれないということがあとがきに書かれていて。

『BOOK BAR:お好みの本、あります。』p.59

実在したかもしれない女性のお話、特に大政奉還や戊辰戦争などの激動の時代に強く生きた人物の話。歴史的な観点でも、ジェンダー的な観点でも関心を持った。

私は本を読むのも好きだが、誰かと感想を言い合うのも好きだ。

共感し合えるのはもちろん、私が絶対辿り着かなかったような視点で話してくれる人もいるし、正反対の意見が出たとしても、それはそれで楽しい。『BOOK BAR』はそんな楽しさを再認識させてくれる一冊であった。

それにしても、世の中にはまだまだ知らない本がたくさんあるな……また読みたい本リストが長くなっていく……

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