自分なりの楽しみや喜びを大事にする。「暮しの手帖」2020年早春 4「丁寧な暮らしではなくても」

「暮しの手帖」2020年早春・4号の特集「丁寧な暮らしではなくても」には、随分と驚いた。同誌はずっと、丁寧な暮らしの代表格のように思っていたからだ。自分の暮らしにしっかりと手を掛け、心穏やかに過ごす。バタバタと忙しない日々を送っている私にとっては憧れでありつつ、遠い存在でもあった。

しかし本誌は、初めに「私たちの暮らしは、毎日がそう完璧にうまくはいかなくて、体調がゆらぐこともあれば、気持ちが落ち込むこともあるでしょう」(p.13)といい、自分なりの工夫を凝らし、自分なりの楽しみや喜びを見いだしていくことを提案している。完璧な理想の暮らしでなくたって、私たちは自分だけの幸福を見つけることができるのである。

私にとっての楽しい暮らしとは?

自分にとっての楽しい暮らしって何だろうと考えてみた。最初に思いついたのは、料理のこと。いつも手間暇かけるのは難しいけど、ある程度時間をとってしたい。毎旬季節の食を楽しむのは大変だけど、気づいたときに楽しめたらいい。料理以外もそうだが、私はたぶん、ある程度自分に手を掛けているという実感があると、幸福度が増す。この「ある程度」が、おそらくミソである。

本誌でもいくつかの料理レシピが紹介されていたが、どれもある程度手を掛けつつ、でも無理はせず、という塩梅で参考になった。例えば、白崎裕子さんのスープ作りのアイデアでは「ミキサーいらずのポタージュ」「焼き野菜のスープ」などの簡単レシピから、スープの風味を変える「味変調味料」の提案まであり、毎日作ることを考えられている。

あるいは、棚木美由紀さんの「小松菜と豚肉の水餃子」が美味しそうだった。水餃子を作ったことがないので作ってみたい。皮から作るのが面倒という人もいそうではあるが、私は結構好き。作ったときの達成感もあって、料理してるなあと感じる。毎日しろと言われたら無理だけど、こういうごはんの日があると満足度が高まるなと思った。

漆器や絵はがき、暮らしをより楽しむアイデア

料理以外でも、これは暮らしに取り入れてみたいな、と思うアイデアがいくつかあった。

日野明子さんの「あれやこれや、道具の話① 漆器の置き場所」では、漆器の魅力について語られていた。漆器に関心を持ったことはなかったが、読んでいるうちに「我が家にも一つほしいな」と思うようになった。ほかの素材にはない触り心地や、器を「育てる」感覚が気になる。

“丈夫に長持ちさせるため”に漆は塗ってあるのだった。そして食事を美味しく見せることや、他の素材にない独特の触り心地の良さが分かってきた。何よりも、使えば使うほど艶やかになる“育てる”楽しさが漆器の醍醐味と思うようになり、独立してからも、誰彼となく漆器の素晴らしさを話すようになった。

(p.96)

また、「エプロンメモ」に掲載されていた、絵はがきの話。年々増えていく絵はがきを、絵柄ごとに「春」「夏」「秋」「冬」の4つの缶に分けるというアイデアで、「絵はがきを使う時に、季節に合うものが選びやすくなります」(p.97)とあり、なるほど……私は絵はがきが好きだが、整理は下手で適当にまとめてしまっている。季節別なら使い勝手も良さそうだし、手紙を出す気分にもなるはず。一度整理してみよう!

それにしても、「丁寧な暮らし」の定義も、喜びや楽しみを見つける瞬間も、人によって全然違う。いろいろなアイデアを取り入れながら、自分らしい暮らしを追求していきたい。

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食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。