ウー・ウェン『料理の意味とその手立て』。隅から隅まで目から鱗の家庭料理指南書

ウー・ウェンさんの著書『料理の意味とその手立て』は、食材や調味料の扱い方から調理法の基本、具体的なレシピに至るまで、ぎっしりと情報が詰め込まれた料理指南書。特徴的なのは、「中国の家庭料理」という観点から解説がなされていること。

日本の食生活や食文化と異なる視点で書かれた内容は、目から鱗の参考になることばかり。一つひとつの食材や調味料を見極め、丁寧に料理をしたいなと思わせてくれる一冊であった。

食材と調味料を見つめ直す

本書は「もやし炒めはごちそうです」という見出しから始まる。スーパーで驚くほど手軽に買えるもやしを炒めるだけなのに、なぜごちそうと言えるのか? それは、「ほんとうにおいしく食べたかったら」時間や手間をしっかりとかける必要があるからだという。

まず、もやしはきれいに洗い、ひげ根を取り除く。これだけでも5分はかかる。炒めるときも適量の油を温めて、じっくり炒めていく必要がある。すぐに箸で触らず、油をなじませ、適切なタイミングで調味料を入れる。程よく歯応えを残した美味しいもやし炒めを作るには、一つ一つのステップを丁寧に辿っていくことが大切になる。

恥ずかしながら、私は一度ももやし炒めを「丁寧に」作ったことがない人間だ。パッと洗ってパッと炒める。そんなふうに何となく作っているものだから、たしかに「あれ?あんまり美味しくないかも……」と思うときがある……

ウーさんによれば、美味しくならないのは「素材の扱い方を間違えているのかも」しれないかららしい。本書ではもやしだけでなく、そのほかの野菜や肉などの扱い方をかなり細かく解説してくれていて参考になる。毎日している料理のことなのに、学ぶことはまだまだ多い……改めて、素材を見つめ直したいところ。

炒め物は時間があるときに、煮物は時間がないときに

「えっ!?」と声に出して驚いたのは、「炒め物は時間があるときにしましょう」のひと言。炒め物は我が家ではどちらかというと「時短」の役割を背負っているような気がする。一方で「時間がないときには煮物」とあり、これまた驚く。

よくよく読んでみれば、炒め物は先のもやし炒めのように、下ごしらえや加熱後の食材・調味料を加えるタイミングがかなり重要になってくる。ゆえに事前準備が重要であるうえに、ずっと見ていなければならず、意外と時間がかかる調理法。一方で煮物は一旦煮さえすれば、ほかのことに時間を割ける……そう言われれば、そうかもしれない……!!

コロナ禍以降、家にいる時間が長くなったために煮物をすることが増えたのだが、私は確かに、煮ている間にほかの家事をしたり、仕事をしたりしているときがある。完全に目を離すというわけではないけれど、でもまあ、ほったらかし料理だ。それって調理時間だけで言えば、実はかなり短いのでは……? そんなふうに考えた事、一度もなかったなあ……

油こそが大切! 料理によって油を使い分ける

日本では、油を重視する文化はあまりないように思うが、中国では油が料理においてかなり重要な役割を担っているらしい。本書によれば、油は「うま味を出すための大事な素材」であり、「出汁そのもの」(p.63)。また、人間の体にとっても必要な成分であるからこそ、美味しく、しっかり摂ることが大切のようだ。

中国ならごま油のほかにピーナッツオイルやコーン油、大豆油、ヒマワリ油などたくさんの種類が5ℓ、10ℓ単位で売られています。それぞれの油に風味と香りがあって、作る料理に合わせて油の変えるのです。

『料理の意味とその手立て』p.62

我が家では油は、炒め物に使うほか、オリーブオイルやごま油は風味付けにも活用しているが、積極的に摂っているという感覚はない。しかし言われてみれば油分、大事である。30代になって一層油分の大切さが染みてきている。もうちょっと油の種類を増やして、使い分けてみようかな? あまりに油に対して、無頓着に生きてきてしまった気がしている……

今回は特に印象的だった部分を中心に紹介したが、魅力的なページはこれだけでは当然なく、一冊まるっと私の料理に対する概念を変えてくれる内容ばかりであった。国や文化が違えば、料理に対する考え方も大きく変わってくる。いろんなプロの知識を吸収しつつ、自分に合うやり方を模索していきたいところである。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。