稲荷町の『中国意境菜 白燕(ばいえん)』では、中華料理のコースが食べられる。と言っても、一般的な中華料理のコースを想像していると、かなり驚くのではないだろうか。
個性豊かなメニューが並び、“中華料理はこういうもの”という偏った考えを覆してくれる。美味しかったのはもちろん、「次はどんな料理が来るのかな」というわくわく感がとても楽しかった。
りんご飴で始まる、アイデア満載のコース
『白燕』のディナーはコースのみ。店側の「これを食べてもらいたい」という強い意志を感じて好きだ。
はじめに登場したのは、なんとりんご飴。と言っても、本物のリンゴではない。中にはフォアグラのムースが入っており、味わいは濃厚。まわりのコーティングは飴というよりゼリーのようなやわらかさがあった。一口でパクっと食べられるアミューズ。ここで完全に、心を掴まれる。

続いて出てきたのは前菜の盛り合わせ。しっかりと濃いめの味つけがお酒にも合うため、紹興酒をいただきながら堪能した。真ん中上にあるよだれ鶏は「たれはこの後の料理でも使います」と店員さん。どの店でもコースには店側が意図した流れがあると思うが、こんなふうに次の料理につなぐ手法は初めてだ。

そして登場したのが、点心。よだれ鶏のたれは、点心につけるためだったのだ! 確かに旨辛いたれが、点心にぴったりである。

コースにあるようでないメニューたち
あまり知らない家庭料理や屋台料理が登場するのも楽しかった。例えば、台湾バジルとイカの炒め物。台湾では家庭料理でこういうものもあるらしいが、恥ずかしながら全然知らなかった。ちなみに店でいただいたものはまさか家庭料理とは思えない美味しさだった。完全にコース料理になじんでいる。

あるいは、クレープ。店員さん曰く「屋台で売られている」とのことだか、これまた屋台料理には全く見えない上品さ。味噌のようなたれにつけて食べてみると本当に合う。これは屋台で食べられない味だと思う。

器で見せる、洗練された中華料理
コース料理も本当に素晴らしかったが、器好きとしては、次々と登場する美しい器にもうっとりしてしまった。藍色の繊細な模様が鮮やかな皿や、青みがかった白の陶器。スープやデザートの杏仁豆腐はツボのような器に入っていて、フォルムが可愛らしかった。

白を基調とした店内で、静かに、でもかしこまりすぎずに味わう新しい中華料理。実に驚きと発見の多いひとときだった。次に行ったときは、どんなメニューが食べられるんだろう。ぜひ、また行って確かめてみたい。
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