ビールは旨い。そんなことはわかっているが、いったいこの旨さはどこからやってくるのだろうか。つくられる過程はなんとなくわかっているものの、その味の決め手はどこにあるのか、ビールの美味しさへの疑問は尽きない。
そんな折に知ったのがビールにおける「官能検査」だった。味やのどごしを確かめ、何が足りないか、この味で良いのかを話し合う、重要な確認作業だという。
ビールの「官能検査」ってなんだ?
三浦しをんさんの『ふむふむ 教えて、お仕事!』にて、サントリーのビール職人である真野由利香さんのインタビューを読んだ(2007年取材)。そこに書かれていた「官能検査」の話が面白かった。
ビールの「官能検査」とは、ビールのテイスティングを指す。その方法はおそらく企業によってさまざまだが、このインタビューによれば、専用のチェックシートにビールの香味の特徴やのどごしを書き込み、その味わいがどのようなものであるのかを明確化し、改善点を見つけるものだという。
真野さんはこの取材当時、ほぼ毎日官能検査を行っていると書かれていた。自社ビールだけでなく他社の商品も飲んで味わいを比べることで、自分の感度を一定にしておかないといけないからだそうだ。こうして日々鍛錬しているからか、目隠ししてビールを飲んでも、どこの会社のビールかわかるらしい。目を閉じてしまえば感覚が失われ、赤ワインと白ワインですら間違える可能性もあるといわれる中で、この研ぎ澄まされた感覚には驚いてしまう。
正しい官能検査を行うための条件がある
官能検査を行う社員の方々は、何となくビールを飲んでいるわけでも、最初から感覚が研ぎ澄まされているわけでもない。きちんと理論や実践に基づいて、自分たちの考えを鍛え、適正な検査を行うよう努めている。
本書に書かれていた条件によれば、官能検査を行うにはまず、官能検査能力テストに合格する必要がある。さらに空腹時の舌が一番敏感であるため、昼前に行わなければならないほか、検査前はたばこや飴などの刺激物を摂ることを禁止されているそうだ。
それから、官能検査を行うのは十数人。繊細な味わいの話をしなければいけないので、多くの人数で官能検査を行って意見を言い合うことにしているという。ここまで徹底されているからこそ、美味しいビールができあがっていくのだろう。
しかも官能検査を無事通過して熟成させ、成分チェックを行い「これでOK」という段階でも再度検査を行って、もう少し寝かせるかなどを考える。つくる過程が機械的であっても、最終的に味わいを決めているのは、人の舌であり、「官能検査」なのである。
世の中には本当にいろいろな仕事があるなあと改めて感心した。官能検査、本当に素敵な仕事である。私たちが美味しくビールを飲めるのは、この官能検査があるからだと思うと、感謝しかない。
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