知的でお茶目なWエッセイ『ああ言えばこう食う』阿川佐和子×檀ふみ

阿川佐和子さんはエッセイや対談をよく読ませていただいていて、檀ふみさんはVISAの連載「元気のダンドリ」の大ファン、という私である。そんな好きなお二人のWエッセイ、『ああ言えばこう食う』はやはり、知とユーモアに溢れていた。

気が合わないようで合う、二人の楽しい関係

阿川さんと檀さんは、わかりやすく気が合って仲良し、ということではなさそうだ。本書を読んでいると、しょっちゅう個性の違いがぶつかり合っているし、言い合いも絶えない。

おしゃべりもたくさんしているが、やりとりをたまたま聞いていた人に「さっきから見てるけど、二人とも相手の喋っていること、ぜんぜん聞いてない」と指摘されているのには笑った。檀さん曰く、「二人とも、自分の口が開いていないときにはいかに相手の話に割り込むか……、そればかりを考えている」(p.9)らしい。

ところが檀さんは悲しいことがあると、落ち込んだ次の瞬間には「そうだ、このことを彼女(阿川さん)に伝えなくては!」と活力がわいてくると言うし、阿川さんは「ダンフミの書いたことに『違うだろうが!』と反論したことは何度もある。しかし不思議なことに、『仲が悪い』と思ったことは一度もない」(p.253)と断言している。

二人はしょっちゅうあれこれと言い合って、喧嘩腰になったりしているが、基本的にとても楽しそうだ。気兼ねなく話せる友達は、別に趣味が同じでなくても良いし、性格が似ていなくてもいいのだなあと感じる。

思えば私の仲の良い友人たちも、趣味も性格もまったく異なる。しかし、話していてふいにぴたっと合致する瞬間があり、それを楽しんでいる節がある。大人になればなるほどそういう「いつも気が合うわけじゃないけどなぜか仲の良い友人」が、貴重で大切になっている気がする。

結婚の余計なお世話とフェミニズム

2001年刊なので現在と価値観も変わりつつあるが、それにしても一緒になって「余計なお世話~!」と怒りたくなったのが結婚についての話題である。お二人は発刊当時独身であったために、他人から結婚について意見されることも多かったらしい。結婚は自由です!!

憤然と乗り切れることもあれば、あまりに言われるために、いろんな意見に惑わされることもあり……例えば、二人で買い物に行って、阿川さんが落ち着いた色味のスーツを買おうとすると「ダメッ! そういうのはもう、アンタ、やめなさい。花柄です、花柄がいいの!」(p.175)と檀さんがなぜか止める。かと思いきやしばらくして「結婚できるのは、花柄の服とは限らないらしいの」(p.176)と別の助言に影響されているのはおかしくて笑ってしまいました。気持ち、わかるなあ……

適齢期に結婚していないとアレコレ言われる時代であり、阿川さんは「年頃になればするものだと信じていた。結婚をしない自分の姿など、想像も及ばなかった」(p.177)と綴っているし、檀さんは「結婚したらあげる」と言われたプレゼントが無数にあったと話す。「『結婚するとき』なんてかたいこと言わないで、今ちょうだい」(p.201)には首をぶんぶん縦に振った。そうだよ、今あげてよ!!

フェミニズムについても軽くではあるが所々で触れられていて興味深い。発刊当時私はフェミニズムのフェの字も知らないような子どもだったから、大人になった今読めて良かったなあ。同じように憤ったり、そうだよなあと頷きながらページを捲ったのだった。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。