『LOCKET』vol.3「朝日の光源」。文化が違っても、同じ空に焦がれて感動することができる

とあるトークイベントに参加した際、『LOCKET』という“独立系旅雑誌”に出合った。手に取ったのはvol.3。透明なプラスチックのような表紙にイエローのロゴ、異国の写真の表紙。どれをとっても新鮮で、興味を惹かれて購入した。

リトルプレスにしては高価格かもしれないが、正直もっと高くてもいいんじゃないか……?と思うほどに凝ったデザインで、内容もぎっしりであった。

朝日を焦がれる気持ちは、国境を超える

本書は著者が海外を旅した際の記録を、写真と文章で綴っている。特に今号のテーマにもなっている「朝日」についてのページは、とても印象的だった。

社会生活に息苦しさを感じている著者が旅に出て、インド・チェンナイで朝日を見ることを目指す。「MANIFESTO」の「朝日が昇るのを待ちわびて、夕日が沈むのを惜しんだいつかのように。もう一度、焦がれる思いで朝日を見上げたいと願ったんだ」の部分がすごく好きだ。

私もまた、最後にのんびりと朝日や夕日を見上げたのはいったいいつのことだろう、と思う。忙しい生活でふいに見ることはあっても、待ちわびたりする余裕はない。本当にそれで、良かったんだっけ?

そう思いながら捲ったページ。チェンナイの慣習や現地のエピソードも楽しく拝見したが、やはり著者が夕日を見た瞬間の言葉が心に残る。「早いよ、夕日が。そう嘆くのは、いったいいつぶりのことだろうか。東京ではいつも、会社から帰りたくて夕日を待ちわびているくらいなのに」(p.13)そして、朝日を見た瞬間の「朝日がこんなにもきれいだなんて……」(p.13)。

写真と文章を併せてぜひ本誌で見てもらいたいが、私は水面と雲の間から覗く陽の光と、ベンガル湾に浸かる人々の写真が好きだった。

嗚呼、そうだよな。インド人も日本人も、ヒンドゥー教徒も仏教徒も、宗教的行為もバケーションも旅雑誌的構想も関係ない。朝日が待ち遠しい、美しい瞬間を目撃したい。それが人間の根源的な欲求であり、普遍という名の根源なのだ。

『LOCKET』vol.3 p.23

朝日を待ち焦がれていると思われる女性の、切ない表情に胸がいっぱいになって、ちょっと泣きそうになってしまった。異国で文化が違っても、この瞬間は同じ気持ちになれる。わかっていたはずのことなのに、改めてハッとする。そういう当たり前だけどかけがえのないことを、考える余裕を持ちたいと思った。

目に見えないものを信じる文化のこと

本誌で取り扱われているのはインドだけではない。さまざまな国への旅が載っていて、各国の慣習や文化などを知れるのも面白かった。

特にアイスランドの旅のページでは、アイスランドで大切にされている「妖精」の文化について知ることができた。妖精の住居を壊してしまうかもしれないという理由で道路建設を中止したり、養成専門学校があったりと、日本にはない文化で不思議。妖精とはちょっと違うが、まるで『ポビーとディンガン』のような世界観だと思った。

日本で目に見えないものの文化と言えば、幽霊や妖怪などがある。私は見えないタイプなのでわからないが、見える、あるいは見えなくても信じるという人はいるし、それに通ずるものがあるのだろうか? 自然や宗教に対する考え方なども密接に関係しているようで興味深い。

ちなみにインドの話でチャイにまつわる情報も載っていたが、はからずもチャイを飲みながら読了。世界観に一層浸ることができたような気がして嬉しい。毎ページ違うレイアウトがユニークで、パラパラとめくるだけでも楽しかった。ほかの巻も読んでみたいところである。

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