イラストで映画の魅力を知る。絵と文で紡ぐ『映画の中の女たち』



『映画の中の女たち』は、著者・亀石みゆきさんが好きな映画の感想をイラストとともに文章にまとめた一冊。タイトルの通り、映画に登場する女性をメインに解説している。国内だけでなく、中国やサウジアラビアなど、多様な作品がまとめられていて興味深い。

何よりイラストが可愛らしく、キャラクターたちの表情も豊か。映画の魅力がありありと伝わってくるのである。

『かもめ食堂』の感想に魅せられて

私の好きな映画ベスト5には、『かもめ食堂』が入る。世界観と美味しそうな食事の数々と、個性豊かなキャラクターたちが大好きだ。『映画の中の女たち』には、同作の感想も掲載されていた。

『かもめ食堂』は、フィンランドで暮らす(あるいは滞在する)女性たちの物語。何気ない暮らしの中で、自分たちの考えや想いを打ち明け合って交流していく様はとても気持ちが良く、観ていて温かな気持ちになれる。

好きな映画だが、感想を改めて語ることは難しいとずっと思っていた。前述のように日常の何気なさが非常に好きなポイントの一つであるので、それをうまく人に伝えられないのだ。「感動するよね!」とか「ワクワクするよね!」とかではなく、ただ「いいなあ」と漏らしてしまう感じ。これをどう説明すればいいのか。

しかし、『映画の中の~』では、私がふつふつと考えていた「いいなあ」が、わかりやすく言語化されていた。「それそれ!」と思わず言ってしまった感想がこちら。

この作品に出てくる女性たちは、いくら親しくなっても決して丁寧語を崩さずに、一定の距離を保って付き合っています。

そういう「人付き合いの奇麗さ」みたいなものは、いろいろな経験をしてきた大人の女性ならではの知恵と賢さがあらわれていてとても素敵だなと思うのです。

『映画の中の女たち』亀石みゆき

また、個人的に、皆でガッチャマンの歌について話すシーンがかわいくて好きなのだが(なんだそりゃ、と思った人はぜひ、映画を観てほしい!)、その一部がイラストで描かれていて嬉しかった……メインストーリーに関係ないやりとりかもしれないが、ほっこりする。

本書で気になった映画たち

まだ見ぬ面白そうな映画を新発見できるところも、本書の好きなポイント。感想を読んで(見て?)、特に観てみたいなと感じた作品は以下。

『少女は自転車にのって』

2012年、サウジアラビアの作品。今はどうかわからないけれど、この当時のサウジアラビアは「女性は自転車に乗ってはいけない」という決まりがあったそうだ。ところが、主人公の少女・ワジダは慣習に囚われず、「自転車が欲しい」という。そして自転車を手に入れるため、奮闘する物語なのだそうだ。

それにしても、女性というだけで自転車に乗ってはいけない、というのは驚いた。この作品を見ればきっと、サウジアラビアのジェンダー観がわかるのだろう。そして、それに立ち向かっていくワジダをぜひ観てみたい。

『インスタント沼』

2009年、日本の作品。三木聡さんが監督、麻生久美子さんが主演。主人公が雑誌編集者というところも共感しそうで観たいと思ったポイントであるが、興味深かったのは亀石さんのコメント。

「見えないものを信じることが大切」という言葉は良く目にしますが、この作品はちょっと違っていて「信じられないことも見ることが大切」だと言います。

『映画の中の女たち』亀石みゆき

UFOやカッパを信じる母と、うさんくさい骨董品を売っている父(かもしれない人)を持つ主人公は、両親と違いその類を全く信じていないはずだった。ところがその実、「自分の人生がうまくいかないのは、昔嫌な思い出の詰まった招き猫を沼に沈めたからではないか?」と、見えないものに縛られてもいる。

イラストと文章で解説されているキャラクターたちもとても濃く、面白そうである。本書には細かな考察も書かれていたので、それも考えながら観てみたい。

本書のように誰かの感想を知るのはとても面白い。自分では気づかなかったことを知れたり、言語化できなかった気持ちを明確にできたりして、新たな発見がある。

それにしても、亀石さんのイラストと言葉には映画への愛が詰まっていて、なんだか感動してしまった。



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