『乙女なげやり』再読。相変わらず一人笑いしつつ、言葉とジェンダーの話題に共感

三浦しをんさんのエッセイが大好き。学生の頃から読んでは電車の中で笑いをこらえ、家に帰っても「ふふふ」と気持ちの悪い一人笑いを浮かべている。

『乙女なげやり』も昔に読んでいたのだが、久しぶりに読み直したいなと思い手に取った。すると、前に笑った覚えのある個所でないところで笑い、違うポイントを「面白い」と思うようになっていた。

恐らく自分が年齢を重ね、そして時代も変わっていく中で、価値観が変わってきたのだろう。そして、変わったのにもかかわらず、私は相変わらず一人笑っている。

言葉まわりの話に共感

編集者やライターの仕事を経て、「言葉」にはずいぶん敏感になった。それゆえに心底共感しながら笑ったのは、「少女まんがの枠を超える」というフレーズについての話。

とある少女マンガのキャッチコピー「少女まんがの枠を超える」を見た三浦さんは「『少女まんがの枠を超え』ることがすなわち『すごいこと』のように受け取れる。

そこで「見当違いもはなはだしい」と、出版社に仮の声明文を書いたという。その声明文も笑ってしまうのだが、何より、この一文に着目して物事を考える発想に共感した。

うーん、明らかにおおきなお世話だ。たかがチラシのあおり文句なのに、必死こいて揚げ足をとるなよ、と嗤われそう。でもチラシの一文が、少女漫画への愛情と理解の欠如の象徴のような気がして、不安になっちゃったの。私ったらもう、取り越し苦労屋さんなんだから。てへ。

『乙女なげやり』p.50

たかが一文、されど一文なのである。私も今なら、気になってしまう。昔の私、言葉一つひとつを丁寧に考えることは結構大事だよ!

あるいは、三浦さんが勝手に読者の相談を想像して勝手に答えるコーナーでは、「『だまされたと思って食べてみて』と言いますが、だまされたと思って食べるひとなんかいるでしょうか」という相談が掲載されているのだが、いや、本当にそう。

世の中にはこういう「気軽に言ってるけど、よく考えてみると変じゃない?」みたいな言葉が溢れている。

それに対する答えもたまらなく好き、黙読していても声に出して笑ってしまう。

【お答え】たしかに。いままで、なんとなく納得して食べちゃってましたが、冷静になってみると変な勧め方ですね。似た類の言いまわしに、「犬に噛まれたと思って云々」というのがありますが、私はあれを聞くたび、「犬に噛まれたいやつがいるか、ばか!」と憤激がこみあげます。

『乙女なげやり』p.281

私はちなみに「人生の半分損してるよ!」が気になるタイプである……昔自分も言っちゃってただけに、なおのこと気になる。「それはそっちが決めることじゃない!」と憤るようになった大人です……

ジェンダー的違和感に、気付けるようになった

読んだ当時からジェンダーの話題には関心があったのだが、今のほうが知識や経験が増えて、より面白く読めるようになった。

例えば、ドアが開いていると音声で知らせてくれる冷蔵庫を、お父さんが女性と認識している話。

「お父さん! 『○○な女(もしくは男)は××だ』という言い回しは避けるようにと、私がいつもあんなに教育してるのに!」
「いや、しかし……」
冷蔵庫としゃべってるところを目撃され、父はへどもどと言い訳する。「彼女があまりにも、一方的な要求を突きつけてくるから、お父さんだってつい……」
「彼女? さっきからなにを寝ぼけたこと言ってんの。なんでこの冷蔵庫が女だってわかるのよ」
「だってこの声(合成音声)、女の人だろ。どう聞いても男の声じゃないだろ」(p.100)

以前は単純にこのやりとりが面白くて笑っていたが、今は「私たちって結構声で性別の認識を勝手にしてしまうことがあるなあ」とか「なんで女性の音声なんだろう? 男性もあるっけ?」みたいなことまで気になってきて、思った以上にいろいろ考えてしまったのだった。

ほかにも、本題とは逸れた話題で、「『道行く三十代の女性に出産の意志の有無を聞く』アンケートの結果などがテレビで流れる。あれが私には納得いかない。なんで女だけに聞くんだろう」(p.53)という話には、「そうだよね!!」と首がもげるほど頷いた。

初めて読んだ当時はあまり気に留めていなかったように思う。今はこの違和感に気付けるようになって、良かったなと感じている。

30代になり、昔読んだ本を再読する機会がかなり増えてきた。そのたびに、以前とは違う発見があって、かなり面白い。そして本質的に好きなものは変わらないんだな、ということも実感している。

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食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。