今井夏美『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』。ユニークレシピと食いしん坊ライフ

今井夏美さんの『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』。今井さんの日常生活で作っているお料理のレシピたちと、食卓まわりの話を綴ったエッセイがまとめられている。「『食いしん坊』と言われ続けた人生」(p.2)(愛おしい響き……)という今井さんの食への愛情が伝わってくる一冊で、実用性がありつつ、読み物としても素敵で、心が温まった。

和の食材×洋の調味料が楽しい

レシピは特に、食材と調味料の組み合わせが、私の脳内にはないものがたくさんあって面白かった。

例えば、「たけのこのマスタードシード炒め」。我が家のたけのこレシピはだいたい煮物かチンジャオロース、最近は春巻を作ったけれど、割と定番のものに決まっていて、まさかマスタードを使おうなどとは思いもしなかった。でも春先にさっぱりと、楽しめそう……今一番作りたい料理!

それから、ふきのとう。「意外なことに、チーズやアンチョビ、オリーブオイル、バターなど洋風の食材に合わせるのがとても美味」(p.27)とあり、とんでもなく驚く。今までふきのとうのポテンシャルを、全然活かし切れていなかったかも……天ぷらとか、ふき味噌とか、やはり和食のイメージで、固定観念に縛られまくっていた。言われてみれば、ほろりとした苦味は、オリーブオイルと相性が良さそうだし、味噌のかわりにアンチョビを使えば、最高のおつまみである。

また、「完熟梅のスパイス砂糖漬け」も衝撃であった。梅とスパイス!!!! 言われてみれば合いそうなのに、組み合わせようという発想がなかった。ソーダと割るとまるでクラフトコーラとあり、それもまた気になる。ハイボールにも合いそうでは……? 2ヵ月冷蔵保存できるらしいので、作り置きしてみたい。

ゆるく、軽やかに食いしん坊人生を謳歌する

私も食べるのは好きであるし、できるだけ美味しいものを食べたいという気持ちは強い。しかし、毎食こだわるのは性格上難しい。手を抜いたり、調理済みのものに頼ったりして、ほどよく食を楽しむことにしている。

そんな中、本書はそれを肯定してくれて、なおかつ、よりゆる~く楽しめる食いしん坊ライフを提案してくれているところも好きだった。特に共感したのは、以下のコメントである。

「もっとおいしく」を限りなく追っかけていたいのはやまやまなのだけど、「これなら作れる」と思えるレシピの軽やかさを優先している。まずは毎日毎食、ほどほどにおいしくご飯を作り、健やかに気持ちよく食卓につきたいのだ。

『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』p.36

「軽やか」と「ほどほど」は、私にとってもかなり重要なキーワード。20代までは完ぺきにこなすことに躍起になっていたこともあったけれど、30代を過ぎてほどよく楽しむことが好きになってきた。そのほうが、こだわりたいときにこだわれる余裕を持てるからである。

特に、ほとんど料理をせずに過ごすキャンプの話が好きで、キャンプ好きであるのにかかわらず、「ダッチオーブンもメスティンも持っていません。ごめんなさい」(p.69)ときっぱり言う潔さに笑ってしまった。キャンプに行ったからといって、こだわりのキャンプ飯を作らなければならないということはない。作ってもいいし、作らなくてもいいのである。ただ、いつも手を掛けずに放置して作って(?)いるという炭火焼きはとっても美味しそうだった……

私も本書のように、ゆるく、楽しく、食いしん坊人生を謳歌していこう。自分と家族や身のまわりの人たちのために。

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食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。