小さな幸せを積み重ねることが、セーフティネットになる。『小さな幸せ46こ』よしもとばなな

よしもとばななさんのエッセイ『小さな幸せ46こ』は、ご自身に起こった小さな幸せを綴ったエッセイ集である。その中で「小さな幸せは、たくさん集まるといつの間にかセーフティネットになるのだと思う」(p.21)という一文があり、私も同じように考えているなあと思った。

将来への不安を救ってくれる、小さな幸せのこと

ここ数年、自分の働き方や暮らし方にいろいろ悩むことが増えた。これ、とはっきりした理由があるというよりは、漠然とした不安や焦燥感。何かをすれば解決する、というわけでもないので、ふいに薄暗い気持ちになる自分をコントロールすることは結構難しい。

しかし、コントロールは出来なくても、小さな幸せで少しずつ自分を満たすことによって、自分で自分の不安を和らげることは可能だった。新しい趣味が見つかったとか、作った料理が美味しかったとか、初めて買ったコスメが自分の肌に合っていたとか……小さな幸せが、確かに自分を少しずつ、少しずつ救ってくれているのである。

それはどれも大層なことではなくて、本当にちょっとしたことばかり。これで不安が一気になくなる、ということではもちろんないのだが、セーフティネットにはなり得る。

ちなみに単行本版のあとがきにて、ばななさんが「なんとも言えず冴えなかった時期でしたが、自分の書いている小さな幸せに自分が救われる、そんな気持ちで続けていた連載でした」(p.284)と記していて、本書は読者を救うだけでなく、ご自身をも救っていたことを知った。

この不安を打ち消すには、とんでもない大きなラッキーが降りかかってくるしかない! ……なんてことはないはずだ。意外と小さな幸せをかき集めることが、自分自身を守ることに繋がるのではないだろうか、と私は思うのである。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。