気になる言葉を探し、集める喜び――『ことばの扉をひらく』再読で考えた、個人的言葉収集癖

自宅の本棚をなんとなく眺めていて、ふと「かえるの学校」さんの『ことばの扉をひらく』が目に入った。ずいぶん前の文学フリマで購入したもので、校正教室の生徒さんたちが気になる言葉を一つずつ選び、辞書から意味を引用しつつ、オリジナルのエッセイを書き加えた本だ。

「ただしい」「あこがれる」など、身近ながら辞書で調べたことはない言葉たちが並んでいて新鮮であったし、改めて言葉の意味を見つめ直すきっかけにもなった。

企画も内容も大好きなのであるが、本書を読み返して改めて気づいたことがある。私はこの企画同様、「気になる言葉を集める」という行為が、割と好きなのではないか?

「ワードサラダ」と「ケーブルサラダ」

最近目に飛び込んできて「おおっ」と唸ったのが、「ワードサラダ」という言葉。文法は間違っていないものの、意味が破綻している文章を指すらしい。バラバラな言葉たちが一緒くたになっている様子が、サラダみたいだからだろうか。面白い響きで、個人的にメモしておきたい単語だった。

そしてこれを受けて思い出したのが、「ケーブルサラダ」である。これは絵本『翻訳できない世界のことば』で知った言葉で、めちゃくちゃに絡まったケーブルを指すらしい。初めて聞いた時はその響きの可愛らしさにきゅんとして、このブログにも書き残した。

私はこういう自分の好きな言葉を、何かと集めたがる癖がある。学生の時のノートを見返してみると、「当時気になってたんだろうなあ」と思われる単語が走り書きされていることが、日常茶飯事。メモ魔なのかなと思っていたが、たぶん違う。おそらく言葉収集癖があるのだ。

言葉を楽しんで生きていきたい

言葉って、楽しい。どの言語であれ、自分にとって気になる表現を見つけると、心の中で復唱し、メモし、にやけている。ちょっと気持ち悪いが、これがどうやら、私の趣味の一つらしい。

そして気づけばこのブログでも、「言葉を楽しむ本」を結構取り上げている。(言葉を楽しむ本の記事一覧はこちら

例えば、三浦しをんさんの小説『舟を編む』。出版社の辞書部門が舞台になっており、物語の中でも言葉に関する議論が散りばめられている。私は中でも「犬」の意味の広がりと、「恋愛」の意味の議論が好きだった。どちらも馴染みのありすぎる言葉でありながら、その使い道や意味を改めて考えてみると、多様な発見があった。

あるいは、オカヤイヅミさんのマンガ『ものするひと』。小説家の主人公・スギウラさんとその周りの人々が、日常の何気ない言葉を見つめ直し、考え、ときにそれらを使って遊ぶ姿が描かれる。この様子が大好きで、読むたびに彼らに交ざって議論したり、遊んだりしてみたいなあと羨んでいる。

こうなってくると、私以外にも言葉を集めたり、見つめ直したり、楽しんだりしている人がかなりいるのだなあと感じる。何気なく使っているものだからこそ、改めて考えるのが面白いのだ。

「言葉を収集する」って、人によっては本当に意味のわからない行為かもしれない。そもそも、表現として正しいかどうかも、怪しい。でも、私は自分の脳内に、愉快で素敵な言葉をたくさんため込み、ときにそれを見つめ直し、使うことが好きだ。この行為が私の視野を広げ、人生を豊かにしてくれているような気がするのである。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。