店と客の数だけストーリーがある。「空想純喫茶 七つのエピソード」



「空想純喫茶 七つのエピソード」は難波里奈さんによる短編集。クルミド出版が発行している喫茶店にまつわる物語を収録した「喫茶の文体」シリーズの一つである。各物語の舞台は全て純喫茶。どれも一ページ完結でさらっと読めるが、読後は純喫茶を体験してきたようなノスタルジーが残って心地良い。

どんな喫茶店にだって、物語がある

読んでみると改めて、どんな喫茶店にも物語があるのだと実感する。登場する純喫茶は架空ではあるが、名物メニューがあったり、「縁結びの喫茶店」などと噂があったりとまるで実在するかのように「性格」がある。

また、喫茶店は食事以外の目的で入る人も多い。一人でのんびり過ごす人もいれば、誰かとの会話を楽しむ人もいる。悲しい気分を落ち着けたい人も、嬉しい気持ちを共有したい人も来る。客の数だけ、物語が生まれる場所といえるだろう。本書に登場する人々の人生模様もさまざまで、喫茶店のロマンを感じる。

定番メニューに心を奪われて

登場するメニューも見どころだろう。コーヒーはもちろんのこと、ホットケーキにナポリタン、パフェ、クリームソーダ……純喫茶と言えば思いつく定番メニューの数々が各物語に散りばめられている。中にはメニューを感情や出来事に例えて表現している部分もあって面白い。

個人的には「パフェ」でシロップやアイス、果物などが積み重なっていく様子を暮らしに例えているのが好きだ。

喫茶店、珈琲、好きな歌、
路地裏の猫、お気に入りの小説、
夏の夕暮れ、夜の踏切、
誰かとのおしゃべり。
自分が楽しくなるように日々作っていく
「暮らしパフェ」

難波里奈『空想純喫茶 七つのエピソード』「パフェ」

純喫茶に行った気分になると同時に、純喫茶の雰囲気が恋しくなる。明日は近くの喫茶店へ足を運んでみようか。

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