いつものご飯にも発見とひらめきを。エッセイ『洋食小川』



作家・小川糸さんのエッセイ『洋食小川』は食の発見とひらめき、そして愛情に溢れている。やさしい文章で綴られる料理の数々は、どれも魅力的だ。今回は「食」に関して参考になった部分を拾いながら、感想を記録しておく。

いつもの料理にひらめきを加える

正月のお屠蘇は、小川さんの夫・ペンギンさんが好きで毎年作るのだという。そんな中でこの年はふと閃いて、日本酒の代わりに屠蘇散を白ワインに漬けてみたそうだ。

よくフランスにある、ちょっとクセのある薬草酒みたいで、私としては、正式なお屠蘇より、カクテルお屠蘇のほうに一票を入れたい。来年から、私のは白ワインで作っておこう。

『洋食小川』p.11

お屠蘇を白ワインに!? と驚きながら読んだが、なかなかに美味しそう。わが家でもぜひ試してみたい。

また、「カレー」を作ろうとした際には肉がなかったものの、冷凍していた鹿肉の存在を思い出し、鹿肉のカレーを作ってみたという。すると、こちらも大成功。残り物と忘れていた鹿肉をしっかり美味しく食べられたそうだ。家で鹿肉を調理することがそもそもなく、あったとしても私の場合、もったいなくてカレーには入れられなさそう……ただ、今回のエッセイを読み、この「カレーにはもったいない」という考えがもったいないと思い直した。

新しい挑戦は失敗することもあるかもしれないが、こうした新たな「美味しい」を見つけることにも繋がる。気になったらやってみる精神を大事にしたい。

食材をおいしく食べる方法を探る

『洋食小川』には、ふだん自分が使わない食材や料理もたくさん登場している。例えばゆりね。ゆりねについては調理したことがなかったので、多様なゆりねレシピに挑戦する話はとても参考になった。

天ぷらやとろみをつけたあんかけなどいろいろ作る中で、このときはゆりねのニョッキに挑戦。ゆりねをニョッキに? と不思議だったが、これが「会心の出来」とあり、興味津々。じゃがいもより「ゆりねの方がより美味しい気がする」(p.22)というから、驚きだ。

茹でたのを、更にカリッと焼いて、あとはオリーブオイルを贅沢にかけ、トリュフ塩をぱらり。
こういう、シンプルな食べ物が、いちばん好きだ。
これからは、ゆりねが手に入ったら、ニョッキを作ろう。

『洋食小川』p.22

ふだんの買い物でゆりねを買うことはないし、スーパーにもほとんど売っていない気がする。だからこそ、次に見つけたら絶対に買って、ゆりねのニョッキを作るのだと意気込んでいる。

ちなみに、小川家の飼い犬の名前も「ゆりね」。ペンギンさんに「どうやったら、ゆりねをおいしく食べられるか」と相談して絶句されたエピソードには笑ってしまった。

作り慣れた愛おしい料理たち

発見やひらめきはもちろん、日頃よく作っている料理についてのエピソードも充実。特にコロッケ愛の話が好きだ。「居酒屋でもビストロでも食堂でも、メニューにのっていると、つい反射的に頼んでしまう」といい、「熱々を頬張る幸せったら、ない」(p.218)とのこと。家でおもてなしメニューを作るときもコロッケを作るらしい。ただし、自分の為に作る気にはなれず、ふだんの食卓にほとんどのぼらないというから不思議だ。

自画自賛しちゃって申し訳ないけれど、やっぱり、自分で作るコロッケが一番好きだ。
とりたてて特別なことをしているわけでもないのに、どうしてこんなに美味しいのか不思議だ。
何かあるとすれば、じゃが芋をオーブンで焼いていることと、豚肉を自分で叩いて細かくしていること、オーブンからじゃが芋を出したら熱々のうちにつぶしてバターを混ぜること、豚肉を炒める時、最後にブランデーを一振りすること。考えられるのは、その程度だ。(p.219)

考えられるのはその程度、という部分が、結構凝っているように感じたのは私だけだろうか。いくつもの一工夫が、コロッケを美味しくしているのだろう。また、テクニックだけでなく、コロッケ愛が詰まっているのも美味しい理由の一つなのではないか。

自画自賛できるメニューがレパートリーにあるなんて素敵だ。私には何かあるだろうか……「これなら誰にも負けない!」と言える料理は、今のところないような気がして寂しい。自画自賛メニューを作ることを、今年の目標にするとしよう。

食好きの方のエッセイを読むのは本当に楽しい。発見もあるし、参考にもなるし、単純に呼んでいるだけでお腹と心が満たされる(もちろん、逆にお腹が空いてくる場合もあるが……)。皆さんも、機会があればぜひ。



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