料理を好きになってから、料理道具にも目がいくようになった。汎用性の高いものから、一点集中の技術派まで、個性豊かな道具たちは眺めるのも使うのもわくわくする。とはいえそこまで詳しいわけでもないので、料理道具愛好家の皆さんの本を参考に勉強する日々である。
とにかくいろんな料理道具を学ぶ
たくさんの料理道具をずらりと並べ、解説してくれている本はありがたい。自分の知らないメーカーや道具を写真集のように眺めながら学ぶことができる。
『ずっと使いたい世界の料理道具』
『ずっと使いたい世界の料理道具』は、海外製の料理道具をたっぷりと紹介している一冊。道具の特徴や使い勝手のみならず、開発秘話や生産元の企業理念まで細かく解説されていて、隅から隅まで読むのが楽しい。
今まで道具の生産国はあまり気にしたことがなかったが、本書を読んで「海外の料理道具」という分野に興味がわいた。国産の道具ももちろん魅力的であるが、海外製のものは国産にはない色遣いやデザイン、用途があるからである。また海外製の料理道具は、海外の食文化のもとに作られている。和食を作るときには使わないものも当然あり、食文化を考えるきっかけにもなった。
上から覗いて目盛りがわかる「オクソー」のメジャーカップ、「ル・クルーゼ」のかわいくて優秀なスパチュラ、食器としても使える「ヴィヴ」のノンスティック・オーブンウェア……気になる道具が盛りだくさん。また、料理中に流したいBGM、お気に入りのレシピや献立をメモするのに使いたいノートなど、料理に間接的に必要な道具の紹介があったのも面白かった。
『「日本の手仕事・暮らしの道具店coto goto」の愛用品じまん』
『「日本の手仕事・暮らしの道具店coto goto」の愛用品じまん』で今欲しい料理道具を探そうとした……ら、思った以上にかわいくて素敵な道具ばかりで、逆に困ってしまっている。
例えば、注ぎ口、目盛り、ブレンダーに使用可能な底面に重心のあるデザインと、てんこ盛りの「家事問屋」のボウル。また、同店のホットパンは上下分解してグリルパンにも使えるらしく、朝、野菜やソーセージ、目玉焼きを焼くような「朝ごはんセット」として◎。
あるいは「工房アイザワ」のスチーマーはステンレスで使いやすそうであるほか、まるっとしたデザインも可愛い。蒸し器を外せば普通の鍋、ということは、これがあれば、蒸し器兼鍋で活用できる。「鶏肉を蒸して、下鍋に落ちた肉汁でスープを作る」というアイデアが載っていた。
「la base」の鉄揚げ鍋セットは揚げ物鍋にザルがついていて、食材をそこに入れて一気に投入し、引き上げられる。油跳ねしやすい物にはネットをかぶせて使えるなんて、ありがたすぎる。我が家はだいたい揚げ焼きで済ませてきたけど、これがあれば楽しそう。
料理道具を愛し、大切に扱うために……
料理道具は当然、買えば終わりではない。使うことが大切であるし、気に入ったものがあれば長く愛用できるよう、ケアもしていきたい。料理道具とじっくり向き合う方法は、以下の本たちが教えてくれた。
『台所にこの道具』宮本しばに
料理道具はそもそも料理をするためにある。しかし宮本しばにさん『台所にこの道具』では、料理を先に考えるのではなく、道具を中心に置いて考えてみようと提案していた。
レシピのために使っていた道具を台所仕事の中心に置くと、道具があってこその料理を考えるようになります。
宮本しばに『台所にこの道具』はじめに
そのうちに台所は遊び場のような愉しい場所になり、料理の幅も広がっていくのです。
また、自分が気に入った道具は「とにかく離さず、使い尽くすこと。道具と両想いになること」が大事という。たくさん使えばそれだけ愛着が沸き、使うことも楽しくなっていく。世の中には簡単で便利な道具が溢れているけれど、その中から自分だけの大切な道具を見つけることは、心を豊かにしてくれる。
ちなみに、本書にて気になった道具は、三重県伊賀市、伊賀焼「土楽」の土鍋。全体的に厚さが均一であるため、ムラなく火が通るそう。また、火を入れるたびに強度が増し、使えば使うほど扱いやすくなっていくそうだ。あるいは、「釜定」の南部鉄フライパン。南部鉄のフライパンは鋳物であり、熱伝導に優れているため、外はカリッ、中はフワッのような料理が得意のよう。重さはあるけれど、ポテッとした見た目がかわいくて癒される。
『伊藤まさこの台所道具』伊藤まさこ
『伊藤まさこの台所道具』では、お気に入りの料理道具とその特徴や好きなポイント、実際に使って作った料理のレシピが紹介されている。
中でも参考にしたのは、圧力鍋の話。圧力鍋は我が家にもあり、これまでローストビーフやハム系の肉料理、シチューなどの煮込み料理を作ってきた。ところが、本書の圧力鍋紹介を読んで、盲点に気付いた。私はまだ圧力鍋で、豆類を煮たことがない。
面倒くさがりの私は、すでに煮上がっている既製品を使うのが常。とはいえ、本音は小分けの既製品でなく、まとめ買いして自分で煮て、定期的に使える状態にしておきたいところ……伊藤さんは好物のひよこ豆をよく煮ているそうだ。
とつぜん食べたくなる好物のひよこ豆。今までだったら煮る時間も待てなくて缶詰のものを使うこともありました。
『伊藤まさこの台所道具』p.68
けれど今はストックしている乾燥豆と圧力鍋さえあれば、あっという間に煮上がってしまいます。おかげで夏の定番、ひよこ豆のカレーを作るのもらくらく。
カレーも最高ではあるが、私の中でひよこ豆といえば圧倒的にフムス。フムスが食べたくて仕方がないときが、割と頻繁にある。圧力鍋を使えば、定期的にフムスを食べられる日常になるのである!!
あるいは、道具との向き合い方で好きだと思ったのは、「マッシュルームブラシ」のエピソードだった。マッシュルームにそっくりの、マッシュルームを洗うためだけに作られたブラシ。伊藤さんは運命的な出会いだと思って購入したのに、実際に使ってみると使い勝手が悪いという。いつものキッチンペーパーのほうが早いかも、と思い悩むも、道具の愛おしさには勝てない。
台所にころんと置かれた使いかけのブラシが、なんだか憎めない表情をしてこっちを見ている。分かったよ、あんたがいるかぎり、私、キッチンペーパーは使わない。そんな気になったのでした。
『伊藤まさこの台所道具』p.112
料理道具は結局のところ使うものであるから、利便性や機能性が欠かせない。しかし、それでも、ずっと使うものだからこそ「自分が気に入っている道具ならそれはそれでいいんじゃないか」と伊藤さんは語る。私も心からそう思う。ゆえに最近は、機能性が少なくても「愛おしい」と感じられる道具も手に取るようになった。
料理道具を知れば料理の幅が広がる。しかしそれだけではなくて、キッチンで過ごす時間がより楽しくなったり、暮らしが豊かになったり、たくさんの恩恵があるように思う。これからもマイペースに料理道具について学び、コツコツ集めて、愛用していきたい。
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