『「おいしい」の、段取り』から、忙しくても「美味しい」を諦めない方法を学ぶ

いつでも美味しいご飯を食べたい。でもなかなか料理をする時間が取れないまま、適当に済ませてしまうことも多々ある。そんなとき、常備菜をきちんと準備している人や、段取りよく何でもこなしている人を見ると、尊敬の念が堪えない。

「美味しい」を諦めずに忙しい日々を乗り切るには、どうしたらいいんだろう? 今回は『「おいしい」の、段取り』から、コツを学んでみた。

自分にとって大切なことを見極める

同書は“食いしん坊”14名による、ご飯作り、キッチンの使い方のコツが紹介されている。段取りは十人十色で、一つとして同じやり方がないのが面白い。

そして一通り読んでみて、「美味しい」を諦めないために最も重要なのは、「効率よく」よりも「自分にとって何を大事にすべきかを見極めること」だと感じた。

例えば、坂下真希子さんは、つねに冷蔵庫に下ごしらえした食材を用意している。温めて、簡単な味つけをすれば、帰宅後30分で夕食が完成するとのこと。大事にしているのは「保存したものを、いかにおいしく食べきるか」。

いつも、使うことを考えて、ひと手間加えてから、冷蔵、冷凍します。かぼちゃなら、ゆでてマッシュしておけば、具材を加えてサラダに、豆乳と混ぜてフレンチトーストにと展開させて楽しめます。

『「おいしい」の、段取り』p.11

なるほど、最初から常備菜を作ろうと考えると難しいが、野菜を茹でておく、切っておく、といったことくらいであれば、時間が無い中でもやっておけるかもしれない。特にこの、かぼちゃをマッシュにしておく方法は、「美味しい」の幅が広がりそうである。

一方イイホシユミコさんは、仕事を大切にしているからこそ、食事の支度を極力シンプルにしている。だからといって、食へのこだわりを捨てているということではない。

「そのなかでできることを考えたら 余計なことをしないおいしさがあることに気づきました」(p.19)と語る。手間暇をかけないことは、美味しさを諦めることとは違うのだ。

「キャベツをね、ザクザク切って炒めるだけ。これがおいしいんですよ」
「クレソンを手でちぎってポン酢をかけて、さらに“追いレモン”するんです。ふわりと香りが立ちますよ」

『「おいしい」の、段取り』p.19

「美味しい」を続けることは、何となく手間と時間を要するようにも思えるが、そんなことはない。自分が満足できるやり方をとことん追求することが、自分らしい「美味しい」を続けることに繋がる。

「心満たす食事には、“引き算”という方法もある」(p.19)という言葉が印象的だった。

自分が心地よいやり方に更新していく

続いて「これならできるかも」と思ったのが、キッチン周りの小さな改善。

不動美穂さんは、「こうしたらもっと使いやすいかも?」を日々更新することが大事だと語る。理にかなった収納は、段取り力をグッと高めてくれるからだ。確かに、“何となく使いにくい”を放置することは、料理するモチベーションを下げてしまう。

料理家の有元葉子さんも『毎日すること、ときどきすること。』の中で似たことを仰っていた。大掛かりな模様替えは大変だが、気づいた時に少しずつ改善するという方法であれば、ハードルも下がる。

ほかにも、宮脇彩さんは、コンパクトなキッチンを最大限生かすために、とにかく「測る」ことにしたとのこと。棚やちょっとしたすき間などを細かく計測し、そこにぴったりの家具や家電をはめ込むという。

そのこだわりっぷりは凄まじく、ジャストサイズが見つかるまでは探し続けるのだという。大変なのではないか、と考えてしまうが「予期せぬ場所で運命のジャストサイズに出会うのも楽しみの一つ」(p.44)だそう。こだわりぬいたからこそ手に入る心地よさもあるのだろう。

ジャストサイズを探し続けることは大変かもしれないが、とにかく測ってキッチンのサイズ感を把握することができれば、使い勝手の幅が広がるはずだ。先述の小さな改善をしていくうえでも、役立つアイデアだと思った。

明日のことを、少しだけ念頭に置く

毎日のことで手いっぱいになることもあるが、「手いっぱいにしない」と決めることもまた、段取り力を高める方法の一つのようだ。

江口恵子さんは仕事を持ちながら毎日ご飯を作る中で、すべての力を使い切らない。夜ごはんにかける手持ちの力が10であれば、「7か8だけ使って、残りの2か3は明日のために使う」と語る。

たとえば、食卓についたら、食べながら翌日のためにじゃがいもをゆでておく…
「じゃがいも1個をゆでるのもけっこう時間がかかりますよね。今日の夕飯のためにゆでると焦っちゃうけれど、明日のためだと食べている間にゆで上がればいいから、ずっと気がラクでしょう?」

『「おいしい」の、段取り』p.94

忙しかったり疲れていたりすると、明日のことを考える余裕がない日もある。しかし、ご飯を食べている間などであれば、少ない労力で準備をすることが可能だ。いつでもフルパワーで頑張るのではなく、「気力を明日に回す」のも、段取り上手のコツだと感じた。

私は料理をするのもそれなりに好きだし、食べることはもっと好きだ。しかし、どうしても料理する気が起きない日や、余裕がなくて「美味しい」を諦めざるを得ない日も多くあった。

そんな中、効率化や時短でない部分で、「美味しいを諦めないための段取り」を知れたのはとても良かった。

今回紹介したのは一部だが、「美味しい」を諦めざるを得ない人がいるならば、本書を参考に、自分なりの続けられる段取りを探してみるのも良いのではないだろうか。

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