『きのう何食べた?』⑯。家族と食卓を囲むということ、自由な発想で作る料理たち

ケンジさんとシロさん、二人の生活が少しずつ変わりゆく中、それでも穏やかに食卓を囲む姿が変わらないことに、ほっとする。どんなに大変でも、忙しくても、やっぱりたまには身のまわりの人と一緒に食事をして、心と体をゆるやかに開放したい。『きのう何食べた?』の16巻で、誰かと食卓を囲む尊さを、改めて実感した。

家族と食卓を囲むこと

もっとも印象深かったのは、ケンジの家族とシロさんが顔を合わせる話。シロさんとケンジは家族のような関係でありながら、法律上家族になることはできない。そんな中、シロさんの立場を思って語る、お母さんの言葉が好きだった。

一度でも家族全員であなたと顔を合わせておけばね
賢二に何かあったとき お互い賢二の身内として
お葬式の時だって筧さんもあたし達と一緒に家族として賢二を見送れるって思ったんですよ
本当にただそれだけだったんです

『きのう何食べた?』⑯

一緒に美味しい鰻を食べながら、顔を合わせて、少しずつ彼ららしい関係を築いていく。この時間は確かに、彼らにとって必要なものだなあと思った。

また、ケンジがシロさんの知らないうちに玉ねぎを使ってしまい、二人で牛丼を作っているときに玉ねぎがないことに気付いた時のやりとり。「ゴメンね~たまにしか料理してないだんなさんに使う予定だった食材を勝手に使われちゃうストレスの話なんて お客様から俺しょっちゅう聞いてんのにね?」と玉ねぎを買いに行くケンジが好きだ。こういう気遣いが生活では大事だよなあ……シロさんもそんなケンジを思いやって、できることをやっておこうと意気込む。

お互いのスタンスを理解しつつ、それぞれの自分らしい暮らしを組み立てることが、共同生活においてはかなり重要だと思う。長年の生活で培った二人の関係性が見えて、素敵だなあと思った。

料理に決まりはない! 自由な発想で楽しむ

毎度自由な発想の料理を楽しみにしているが、今回は特に「それいい~!!」と声に出して言いたい料理がたくさんあった。

例えば、シロさんの同僚・山田さんが、育児に疲れて料理ができなかった旦那さんのために、あり合わせで作った夏豚汁(豚肉とトマトとニラのみそ汁)と卵かけごはん。子どもたちも卵かけご飯に大喜びで、野菜も肉も入っていてある程度ボリュームもあって……何より美味しそう。

「こ…こんなんでいいの…!?」という旦那さんに「ちょいちょいこんなんでいいのよ…」とほほ笑む山田さんが好きだった。いいんやで、こんなんで……むしろ「こんなん」が最高なんやで!! 日々料理を作る身としては、本当にじわじわと染みる回。

また、ケンジと、シロさんの友人・佳代子さんがついに対面! いつのまにか結構年数が経っていて、むしろ今まで会わなかったことが不思議なくらいである。「ついにケンジに会えるぞ~!!」と盛り上がる夫妻が可愛かった。

そしてこのとき佳代子さんのご自宅で作っていたズッキーニの天ぷらが、気になっている。「ズッキーニってちょっとほろ苦いじゃない? 山菜と同じでそれが天ぷらダネに向いてんのよ!」(p.132)というセリフに妙に納得……

ちなみに、本書に登場したケンジお手製のドライカレーは作ってみました。めっちゃ簡単で美味しかった~!!!!

家族や友人との関係も、日々いろいろあるけれど、それでも一緒に食卓を囲むことは尊くて、意義がある。『きのう何食べた?』はそのことを毎回、思い出させてくれるのであった。

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