古本屋に定期的に赴いている。本が安く手に入るということもあるが、何より、そこでしか出合えないであろう本に出合うことが楽しい。
本の価値が変化する場所だから、たくさんの出合いがある
古本屋で売っている本の値段は、一律ではない。相場もあるだろうけれど、基本的に値段を決めるのは店主。客はその自由に決められた価格を見て、買うかどうかを判断する。
人から売ってもらった本、古本どうしの市で買った本、別の古本屋で買った本、みんな古本です。道で拾った本をきれいに拭いて、値段をつけて並べてもいいのです。今日発売された本を新刊書店で買って、読んですぐ店に出してもかまいません。これも古本です。仕入れの方法がたくさんあり、自由に値づけできるのが古本屋です。
『本屋になりたい』宇田智子
このシステムの良いところは、古くてマニアックな本にもスポットが当たるところではないだろうか。そして、これが、思いもよらない出合いをもたらしてくれる。
新刊書店ではやはり、新しい本や話題の本、人気の本が前に出る。しかし、古本屋はそうとは限らない。
店主の好きな本、決して大衆受けではないけれど一部から熱烈な愛を注がれている本など、個性豊かな本たちが店頭に並んでいる。そのため、自分では見つけられなかったかもしれない魅力的な本に出合える確率が高い。
また、前々から欲しいと思っていた本がやっぱり高い値段をつけられていることもあれば、かなり手頃な価格で手に入ることもある。掘り出し物を見つけたときは、この上ない多幸感……これもまた、古本屋で本を買う醍醐味である。
絶版になった本にも出合える
もう二度と新刊書店では出合えない……そんな本だって、古本屋には売っていたりする。私は古典が好きなのだが、古典の原本や批評本はすでに絶版になっていることも多いので、非常に助かる。
自分がよく利用することもあり、読まなくなった本を出来るだけ古本屋に売ることにしている。捨てると二度と誰も読めないけれど、古本屋にあれば、また誰かの手に渡っていく可能性があるからだ。
出版不況で絶版になることも珍しくないので、特に紙の本は丁寧に受け継いでいきたい。
古本を通じて、誰かと繋がることができる
古本はもともと、誰かの手元にあった本だ。それゆえにときどき、メモ書きや蔵書印などが押されているものがある。商品としてはあまりよくない状態であるものの、私はこれが結構好き。
見つけたときにほっこりする何気ないメモはもちろん、意外と参考になるものもある。これは古本でしか味わえない感覚かもしれない。
古本屋は本が安くて助かる。それはそうだが、私はそれ以上に、「自分が知らない魅力的な本に出合える」瞬間が好きで、通っている節がある。次はどんな本に出合えるだろうか。わくわくしながら、今日も古本屋に行く。
2019年、初めて第60回 神保町「神田古本まつり」に伺った。古書店内だけでなく、道なりにずらっと古本が並び、まさに掘り出し物満載状態。価格もさらに手頃になっているものもあり、気になるものをどんどん手にとっては購入した。
……が、ハードカバーの本を買いすぎて、帰り際、あまりの重さに肩が外れるのでは、と恐ろしくなった。付き合ってくれた友人も「買いすぎでは?」と心配するほど。自分の欲深さに参ったのであった。
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