「だし」を楽しむための個人的参考書まとめ。とり方、種類、活用方法を学ぶ

「だし」の旨味が本当に好きだ。かつおも昆布も鶏ガラも、トマト、コンソメなど洋の食材の味わいも……体の芯からじんわりと「美味い」と感じ、幸福な気持ちになる。そんなわけで、だしをより楽しむべく、個人的にさまざまな本を参考にし、学んでいる。

『だし生活、はじめました。』

だしが好きで、正しい方法で取れるようになりたいと思っていたとき、本屋でたまたま見かけた『だし生活、はじめました。』の冒頭に、以下が書かれていた。

ここ数年、ずっと「だしくらいとれないとなあ……」と、心のどこかで思っていた。別に、顆粒だしやパックのだしを使うことに罪悪感があるわけではない。ただ、いい年をして、正しいだしのとり方を知らないのもいかがなものだろうかと。

『だし生活はじめました。』梅津有希子

正直、「私のことか?」と目を疑った。その場で数ページ読んだのち、自然とレジへ足を運んでいた。

本書は、著者の梅津有希子さんが“だしをとる生活”をスタートさせた体験記。なんとなく難しく考えていた「だしをとる」作業が実は簡単で、しかも自分にとって良いことがたくさんあると気づき、だし生活にハマっていく様子が綴られている。

中でも、かつおだしの取り方は参考になり、かつ気が楽になった。私の場合はそもそもかつお節の適正な量や、沸かす分数を知らなかったので、「まずは正しい量を知りたい」と思い、読み進めていた節があった。

ところが本書では、じつに多様なかつおだしのレシピが登場する。料理人の方やだし専門店の社員さん、多くの人が登場するが、それぞれに分量も手順も異なる。昆布などのほかのだしもそうだ。言ってしまえば、人それぞれなのである。これを知ったことで、「正しい方法なんてない、自分の気に入ったやり方を取り入れればいい」と楽しめるようになった。

だしづくりに挑むだけでなく、さまざまな専門家にだしについて学びに行く過程も描かれている。『にんべん』の社員の方や『分とく山』、『イル・ギオットーネ』などの名店のシェフたち。さらに、昆布の専門店『佐吉や』、「北海道昆布館」などにも訪問し、とことんだしについて追及している。私のように「だしをとりたいから読む」と言う人が多いかもしれないが、シンプルに食の研究書的な意味でも面白かった。

「おきなわいちば」vol.64

沖縄料理にかつおだしは欠かせない。沖縄そばや中身汁、いなむどぅちなどの汁物にもだいたい使用されているし、ゴーヤーチャンプルーなどの炒めものやしりしりには、かつおだしを加えたり、かつおぶしをたっぷりかけることもある。こうなってくるともはや、かつおだしの優しい味わいが、沖縄の味を作っていると言えるのではないだろうか。

沖縄のカルチャー誌『おきなわいちば』64号では、「時間がおいしくする料理」と題し、手間暇をかけて作る沖縄料理を紹介していた。本書によれば、沖縄料理の味を表す方言に、「あじくーたー」という言葉があるらしい。「だしの旨味が素材に凝縮されている」という意味だそう。沖縄料理ではそれほどに、だしの旨味が重要視されているといえる。

かつお節について詳しく解説していたのだが、意外と知らないことが多くて驚いた。例えば、「血合い」について。かつお節には「血合い入り」「血合い抜き」があり、味わいに違いが出るという。

「すまし汁などすんだ味わいにしたいときは血合い抜きを使います。血合い入りは深みがでるので、沖縄そばのだしなどに特におすすめ。パンチのある味に仕上がりますよ。料理によって使い分けるといいですね」

「おきなわいちば」64号 時間がおいしくする料理

かつお節の血合いなど、今まで一度も考えたことがなかった。しかし、いざかつお節をいろいろ見ていたら、「血合い抜き」などの記載があるではないか。全然知らなかった……

あるいはかつお節は「本節」を中心として、「雄節」「雌節」に分かれているらしい。鰹の鰹節になる部分を本節といい、背中部分が雄節、お腹部分が雌節。沖縄の方言では「うーぶし」「みーぶし」というそうだ。雄節と雌節は一対で縁起物として、結納品などにも使われているらしい。

「雄鰹節(うーぶし)は鰹の背の部分であっさり。雌鰹節(みーぶし)は腹の部分で、脂がのっていて濃い味わいになります。」

「おきなわいちば」64号 時間がおいしくする料理

ちなみにかつお節の取り方同様に、「豚だし」の取り方も掲載されていた。豚肉を余すことなく使う沖縄の食文化だからこそ、「豚だし」もまた欠かせない食材の一つなのだろう。

毎日、料理でだしを使っている。それゆえに、だしの活用方法を学べば学ぶほど、より料理の幅が広がり、食事が楽しくなっていくのではないかと考えている。まだまだ「だし」の世界は広く、奥が深い……

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。