料理の苦手意識を覆す。『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』に見る料理の本質と意義

料理に苦手意識がある人は多い。ほかの家事に比べてハードルが高い作業に思えるし、以前に失敗したことがある人や、恥をかいたことがある人であればなおさら、「自分にはできない」と感じてしまいがちかもしれない。

あるいは、忙しくてできない、面倒という人もいるはず。気持ちはよくわかる。料理が好きな私ですら、疲れていると億劫になる。

しかし、料理は本当に「出来ない」のだろうか。あるいは、後回しにすべき「面倒で手間のかかるもの」なのだろうか。 そんな疑問を投げかけ、料理の本質、楽しさを教えてくれたのが『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』であった。

“料理が出来ない”という思い込みを覆す

本書は著者のキャサリーン・フリン氏が料理教室を開催し、その様子をドキュメンタリー形式で綴っている。

一般的な料理教室の雰囲気であれば私自身も参加したことがあるし、なんとなく想像できる。しかし、まず始まりからしてちょっと不思議だった。

課題の料理を作るという基本はあるものの、目的は料理を作ることだけに留まらない。どちらかといえば、“生徒の料理の概念を変えようと努めている”というイメージ。

例えば「自分では料理が出来ないから、既存製品に頼る」という生徒がたくさんいたが、彼らに対して、それはメディアに作られたマインドであること、既存品がなくても自分で作れることを丁寧に指導していく。

生徒たちは少しずつ考え方が変わっていき、自分に料理が作れることを実感していくのである。

「私がクラスで学んだことのなかで、いちばん大切だったのは、特別に何かを買いにいかなくても、家にあるものを使えばいいということ。私、ドレッシングのバリエーションなら延々と作ることができるようになった。以前は蒸し野菜をそのまま食べていて、全然美味しくなかったし、ウキウキするものでもなかった。でもね、いまでは、あ、何を混ぜたら実際に美味しくなるかな? って考えるのよ」

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』p.299

これには、私も思い当たる節があった。

一人暮らしを始めた当初、よく中華料理の素を使っていた。野菜や肉と和えるだけで本格中華が出来上がるソレは、とても美味しく便利だった。そして確かに「中華料理は難しくて自分ではできないから助かるな」と思っていた。

ところが料理をし始めて10年過ぎた今は、素を使うことはほぼなくなった。自分で簡単に作れると知ったからである。

私の場合は「この材料ないけど作りたいなあ」と思って調べた結果、自分で作れることにたどり着いたのだが、正直、もっと早く知る機会があればなあとは思っていた。

本当は自分でもできること、難しいと考えていたものは知らないだけであること、それを一つずつレッスンによって教えてくれる。

料理の仕方だけでなく、道具の選び方や買い物の仕方、食材の選び方までレクチャーしてくれるので、料理に慣れている私も勉強になることが多かった。

自分が美味しいと思えば、それが正解である

もう一つ、この本を読んでいて感じたのは、「自分が健やかにいられて、美味しいと感じる食事」が一番大切であるということ。

それは何から何まで手づくりすることでも、インスタントや冷食に全く頼らないということでもない。要は自分が食事に関してできることを増やし、少しでも食について考える時間を作り、楽しく美味しく食事をすることである。

次のコメントはまさに、私の言いたいことを表してくれている。

料理ができないなんて誰が言ったの? 何から何まで手作りしなければダメだなんて、うそっぱちだよ。食べるものすべてがオーガニックで、地元で栽培され、グラスフェッドでなきゃダメなんてこともないんだから。インスタントのツナキャセロールと、“トップ・シェフ”の間に、あなたにとって心地よい場所を見つければいいじゃない。

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』p.199

ほかにも「もしまずかったとしても、気にしなくていいじゃない。たかが1回の食事ですもん」(p.261)「正解や不正解はない。あなたにとって美味しいものが、美味しいんだから」(p.162~163)といった、勇気づけてくれる言葉が並び、料理に対するマイナスなイメージをガラッと変えてくれる。

料理が苦手な人も、面倒な人も、必要ないと思っている人も、一度読んでみると考え方が変わるかもしれない。料理は“丁寧な暮らし”をするための技術ではなく、自分がよりストレスなく楽しく食事をするための手段の一つであると、わかるから。

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