料理バリエーションを増やすコツ。食材の意外な組み合わせ、調理法、アイデアを本から学ぶ

日々の食卓には、毎度自分の作った料理が並ぶ。好きなものばかりを作っているので嫌にはならないが、どうにもバリエーションが増えず、代わり映えしないので飽きてしまうこともある。

そんなとき、誰かのとっておきのレシピを参考にすると、たくさんの発見がある。自分では考えつかなかった食材の組み合わせや調理法を見つけられるでなく、料理の幅もぐんと広がる。

自分の中にない「食材の組み合わせ」を学ぶ

自分では一生辿り着かなかったであろう、食材、調味料、そしてそれらの組み合わせを、本からたくさん学んだ。

がんばりすぎないごはん 近藤幸子

余裕がないけどどうしても美味しいものを食べたい、と考えたとき、心強い味方になってくれたのは近藤幸子さんの『がんばりすぎないごはん』

小松菜を刻んでオリーブオイルやレモンと和えてソースにした「牛こま肉の小松菜ソースがけ」、ゆかりとバターの風味香る「豚肉とゆかりのバター炒め」、旨味爆発の「トマトおでん」などなど、見慣れた食材の意外な組み合わせが楽しく、いくつか作った。

小松菜はざく切りで炒めたりお味噌汁にしたりすることはあっても、刻んで「ソース」にするという発想がなかったし、ゆかりとバターなんて組み合わせようとも思ったことがなかった。トマトおでんはレンジを活用した時短で、「おでんってそんな簡単でいいんだ!」と発見があった。

わたしのごちそう365 寿木けい

エッセイスト・家庭料理人の寿木けいさんによる、12カ月を通したレシピ集。ご本人は「レシピとよぶほどのものでもない」とおっしゃっており、実際手軽にできるもの、かつ140字に収まる作り方ばかり。しかし短いながら愛のある解説は、個人的には立派なレシピだと思う。

中でも新鮮だったのは「かつおのマスタード漬け」。かつおはたいてい、ポン酢や生姜、ねぎと和の調味料でいただくばかりで、私の中になぜか、洋の調味料の引き出しがなかったことに気付いた。このほか「カリフラワーとレモンのリゾット」「牡蠣とセロリの焼きそば」なども、一人勝手に「そうきたかあ」と唸る。よく使う素材にも、新発見が多い。

また、「トマトのポワレ」はアラン・デュカス氏の真似から始まったそうだが、シンプル過ぎるレシピに感動。アイデア豊富な料理家さんも、いろんな人を参考にしているのである。

料理集 定番 細川亜衣

『料理集 定番』は、細川亜衣さんが定期的に作っている料理の思い出やレシピが掲載されている。ラインナップは、多くの家庭で作られている「定番」といえそうなものが多いにも関わらず、作り方や具材に個性がにじみ出ている。参考になるだけでなく、自分の定番も見直したくなる一冊だ。

特に参考になったのは「翡翠そうめん」。「だし好きの私と娘は、麺以上に汁を楽しみたいという気持ちが強く、汁まで全部飲み干せる、この“翡翠そうめん”がわが家では定番になった」(p.24)とあり、共感が止まらない。私もだし好きで、汁まで飲みたいタイプだからである……

麺つゆを飲み干すことはなかなかない。我が家も飲むというよりは、そうめんをたっぷり入れて「使い切る」という感じ。しかし本書では、飲み干せるように具材とだしを上手に使ったレシピとなっていた。翡翠、ということで、緑の野菜をたっぷり入れるのが特徴。ここではオクラやピーマン、青唐辛子、きゅうり、モロヘイヤなどが使われていたが、自分の好きな緑野菜をカスタマイズして楽しめるのもいい。

あるいは「ピーマンの肉詰め」。我が家では定番とは言いがたいが、まあ何度か作ったことはある。ただ、本当にシンプルなレシピのもの。ところが、本書のピーマンの肉詰めは具材たっぷりで、私が知っているレシピと全然違う。「ピーマンはあまり好きじゃないけれどピーマンの肉詰めは好き」という娘さんのために工夫して作ったものなのだという。

玉ねぎ、トマト、小さく刻んだ肉に、唐辛子、そして、ごま油とかつおぶし。すべてが彼女の好物。どれも、ピーマンとは相性抜群の食材ばかりだ。
果たして、彩りも香りも鮮やかな、ピーマンの肉詰めができあがった。子どものひと言で料理を考える、そんな時間が好きである。

『料理集 定番』p.80

言われてみれば、家族の好みによって「定番」は変わってくる。私と夫が苦手な食べものは(ほとんどないけれど)食卓に上らないし、逆に好きなメニューはしょっちゅう作っている。家族の好き嫌いや食生活によって、その家オリジナルの「定番」が出来上がっていく。そうなると誰かの定番は、ほかの誰かにとっては新鮮で面白いものになっているはずなのだ。

今井夏美『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』

『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』は、今井夏美さんがふだん作る料理のレシピと、食卓まわりの話を綴ったエッセイ。「『食いしん坊』と言われ続けた人生」(p.2)(愛おしい響き……)という今井さんの食への愛情が伝わってくる一冊である。レシピは特に、食材と調味料の組み合わせが、私の脳内にはないものがたくさんあって面白かった。

例えば、ふきのとう。「意外なことに、チーズやアンチョビ、オリーブオイル、バターなど洋風の食材に合わせるのがとても美味」(p.27)とあり、とんでもなく驚く。今までふきのとうのポテンシャルを、全然活かし切れていなかったかも……天ぷらとか、ふき味噌とか、やはり和食のイメージで、固定観念に縛られまくっていた。言われてみれば、ほろりとした苦味は、オリーブオイルと相性が良さそうだし、味噌のかわりにアンチョビを使えば、最高のおつまみである。

また、「完熟梅のスパイス砂糖漬け」も衝撃であった。梅とスパイス!!!! 言われてみれば合いそうなのに、組み合わせようという発想がなかった。知っている使い慣れた食材ですら、まだまだ無限の可能性を秘めていることに気付かされたのであった。

料理道具がアイデアを生んでくれる?

料理のバリエーションを広げるアイデアとして、レシピ本を参考にする以外にも、「料理道具の活用の幅を広げる」という手段もある。

料理道具から料理を考える

私が「料理道具」により愛を持つようになったのは、宮本しばにさんの『台所にこの道具』を読んでから。

それまではまず「料理をする」という行為があって、道具は「そのために必要なもの」という認識だった。しかし同書では「料理道具から料理を考える」というスタンスを提案していた。

レシピのために使っていた道具を台所仕事の中心に置くと、道具があってこその料理を考えるようになります。
そのうちに台所は遊び場のような愉しい場所になり、料理の幅も広がっていくのです。

宮本しばに『台所にこの道具』はじめに

例えば、本書に掲載されている道具の一つの「焼き網」。ふだんの生活ではキッチンに魚焼き用のグリルがあるから、購入しようなんて考えたこともなかった。ところが宮本さんは「四季折々、焼き網で何でも焼きます」といい、野菜や厚揚げ、きのこ、食パンなど、多様な食材に活用している。

「そんなに何でも焼けるの!?」と驚いたと同時に、自分でもどう使おうか、考えてみたくなってくる。そうすると、今まで考えもしなかったアイデアが降ってきたりして、料理の幅がいつのまにか広がっていたのだった。

料理道具を出しっぱなしにしてみる

料理道具は、アイデアの宝庫だ。『別冊天然生活 暮らしを育てる台所』の中でくるみの木・石村由起子さんは、コンロまわりに料理道具を並べておくことで、「『次はこれを使ってみよう』『このお皿に盛りつけてみよう』って、料理のアイデアにもつながりますね」(p.17)と話していた。

私も最近、ずっと見えないところにしまっていた「肉たたき」を発掘し、「薄いカツレツが作れる!」と閃いたばかりである。綺麗にしまってある台所も素敵だけれど、料理道具がいっぱいに並んでいるのもまた好き。料理道具を眺められる台所づくりをしておきたい。

道具があれば、できることも扱える食材も広がる

伊藤まさこさんの愛用品を紹介している『伊藤まさこの台所道具』では、圧力鍋で「豆を煮る」という話があった。

我が家ではあまり、豆を使う習慣がない。納豆や出来合いのお惣菜で取り入れるくらい。しかし、圧力鍋で簡単に豆、特に「ひよこ豆」を煮ることができるらしいと本書で読んでから、考え方が180度変わった。なぜなら私は、大の「フムス(ひよこ豆のペースト)」好きだからだ!!!

我が家には圧力鍋がある。ならば、フムスを自分で作れてしまうということである。世紀の大発見、ありがたすぎる圧力鍋……

ちなみに、同書で最も心を惹かれたのは「マッシュルームブラシ」。マッシュルームにそっくりの、マッシュルームを洗うためだけに作られたブラシ。昔はこういう局所的な使い方しかできない道具があまり好きではなかったが、今は「手入れは必要だけど愛着がわく」とか「使い道は限られるけどあると便利」といったものに目がいくようになった。こういう道具こそが、自分の料理の楽しみ方を広げてくれるような気がするからだ。

私にとって料理は「いつもの生活」の中にあるもので、手を抜いたり無心で作ったりしたいことももちろんある。しかし、同時に「好きなこと」でもあるし「楽しみたいこと」でもある。いろんな情報を参考にしながら、これからも私らしく料理を楽しんでいきたいと考えている。

もっと「料理を楽しむアイデア」を探す

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT US
襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。