現代に馴染みすぎている魔女にほっこり。『ふらいんぐうぃっち』①

『ふらいんぐうぃっち』はタイトルの通り、魔女の話である。ただ、ファンタジーというより、人間の暮らしに馴染みすぎていて、「え、そんな感じ?」と脱力するような、ほのぼの日常ストーリーであった。私のまわりにも魔女、いるかもしれないよなあ。いたらいいなあ。そしたら、仲良くなりたいなあ……

ホームセンターでほうきを買う今風の魔女

物語の舞台は現代のとある田舎町。15歳の魔女・真琴は高校に通うため、又いとこの圭の家に預けられる。魔女の存在がほとんど知られていない場所で、より立派な魔女になるための修行を行うようである。

日常に馴染む魔女と言えば、『魔女の宅急便』のキキもそうかなあとは思うが、真琴はより、今風な感じがする。ホームセンターでサクッと飛ぶ用のほうきを買い、本来は15歳で一人前なのに「魔女はいろいろ不安定だから高校には行っておいた方がいい」という両親の勧めで高校にも通う。「もう…しきたりの面影ゼロですよ」と呟く真琴には笑ってしまう。

とはいえ、ペットの黒猫・チトさんと普通に会話したり、空き家の雑草からマンドレイクを見つけ出し「友情の証です!」と一般の友人にプレゼントしたりして(当然、友人はビビりまくる)、魔女的当たり前をしれっと日常に溶け込ませてくる。

その絶妙な脱力加減に、ほっこりする。こんな感じで近くに魔女がいてくれたら、日常がもっと楽しくなるだろうな。

魔女がいる、温かで優しい世界のこと

基本ほっこり、笑える話なのだが、ふいになるほど、と思わせられるから油断ならない。例えば真琴は魔女の修行の一環として、畑で野菜を育てることにする。なんで野菜? と思ってしまうものの、魔女はいろいろなことに精通していなければならないからだという。

色々なことを知っていればいるほど立派な魔女って認められるの
それで私みたいな新米魔女は色々な経験を積まないといけないんです
だから野菜作りも人生経験であり勉強なのです

『ふらいんぐうぃっち』①

魔女の修行の話のはずだが、人間にもいえることだなあと妙に頷く私である。いろんな経験を重ねていくことが成長につながるのは、何も魔女界隈だけの話ではない。

あるいは、魔女ゆえに魔術を使ったり、人間でない生き物との交流もあったりするのだが、それらを見ていると、「人間の世界は魔女のおかげで回っているのかもしれないな」と思えてくる。個人的には、春を運んでくる「運び屋」とのやりとりがかなり好きだった。

この世界では季節を「運び屋」と呼ばれる存在が連れてくるらしい。そして彼らの大仕事を支えるのが、魔女である。彼らを元気づける気つけ薬を渡し、陰からサポートしているようだ。優しい世界の、優しいやりとりが心に沁みる。今年の春や夏もきっと、運び屋が届けてくれたに違いない。

魔女の真琴は今後、どう成長していくのだろうか。どんな結末を迎えるのだろうか。物語のゆったりとした速度に合わせて、じっくり楽しんでいきたい。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。