本当に暮らしやすい街とは何かを見つめ直す。『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』①

世の中の人は、いったいどうやって住む場所を決めているんだろう。学校や勤め先の近く? 家族や恋人、友人の近く? 家賃が安いから? 好きな街だから? あるいは「住みたい街ランキング」上位だから?

『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』は、まさに「住みたい街ランキング」の上位常連「吉祥寺」で暮らす双子の不動産屋・富子と都子の物語。毎回「吉祥寺に住んでみたい」と尋ねてくる客の話を聞き、物件を紹介する。

ところが案内する物件は、吉祥寺とは限らない。客の要望によっては「それ、吉祥寺じゃなくてもいいんじゃない?」と言いながら、ほかの魅力的な街にも連れ出してくれる。

一見強引だが、彼女たちは客の理想の暮らしを引き出すのが上手い。最初はなんとなくで吉祥寺を選んでいた人も、自分がどんなふうに暮らしたいかを改めて自覚し、本当に住みたい街を見つけていく。

便利な街が本当に住みたい街なのか?

吉祥寺に私は住んだことがないが、便利で居心地が良さそうなのはよくわかる。何度も遊びに行ったこともあるし、暮らしている人たちはみんな楽しそう。本編に登場するお客さんたちの多くもまた、「吉祥寺は便利だから」「住みやすそうだから」と、“なんとなく”吉祥寺内で住む家を探している。

しかし、都子と富子がより深く話を聞いていくと、「吉祥寺でなければならない」人はほとんどいない。そこで二人は、それぞれの客に合いそうな街と物件を探していくのである。

そして、吉祥寺ではない街や物件を気に入った客に富子は言うのだ。「吉祥寺はたしかにいい街だけど、吉祥寺だけがいい街じゃない」。

便利で有名な街であれば、なんとなく安心するという気持ちもわかる。しかし、本作を読んでいると「便利な街、いいイメージのある街=自分の住みたい街ではないよなあ」としみじみ感じる。吉祥寺が一番合う人もいれば、そうじゃない人もいるのである。

私自身、現在好きな街に暮らしている。街並みの雰囲気や周辺にある飲食店、本屋などを気に入っているから、外をふらっと散歩するだけでも楽しい。

東京のまだ見ぬ魅力を、暮らしから探る

同書の良いところは、吉祥寺の街の魅力と共に、吉祥寺以外の東京の町の魅力を知れるところ。毎回客の要望に合わせて連れて行く町や物件はさまざまで、それと同時に街に実際にある飲食店や施設が登場する。

1巻で私が印象的だったのは、「中野」。中野ブロードウェイも知っているし、行ったこともあるのだが、まさか住めるとは知らなかった!! 地下に八百屋や魚屋があるのも新鮮……私は中野ブロードウェイの一体何を見ていたのか……

また、中野区全体で商店街が80以上あるのもスゴイ。中野にとっても興味がわいたのであった。

本作ではほかにも、その街で実際に営業しているおすすめのお店や実在するマンションが登場し、マンガとして面白いだけでなく本当に住む場所の参考になる。

今住んでいる街からどこかへ引っ越したい人も、東京で暮らしてみたい人も、いつか住む“自分の街”を想像しながら、読んでみては。



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