紙製品が好きで、とにかくついつい、メモ帳やら便箋やらノートやらを手に取ってしまう私である。だから『レトロでかわいいポルトガルの紙もの』も、「かわいい紙をたくさん見たい!」という一心で手にした。
ところがパラパラと捲っているうちに、ただ「かわいい」という感情だけでは済まなくなってきた。なぜならそこには、ポルトガルの意外な文化を知る手掛かりが詰まっていたからだ。
焼き栗の袋が教えてくれた、焼き栗屋台の文化
本書は、著者の矢野さんがポルトガル滞在時に集めた「紙もの」を紹介する一冊である。雑貨の包装紙や食品のパッケージ、パンフレット、レシートに至るまでさまざま。どれもレトロでかわいらしく、ポルトガルの魅力が詰まっているように感じる。
中でも印象的だったのが、焼き栗専用の袋であった。
焼き栗。どうも日本の祭りの屋台や、中華街などを思い出す。すっかりアジア系の文化だと思い込んでいたが、冬場のポルトガルでは馴染み深いもののようだ。特にマルヴォオンという村は栗の名産地として知られており、毎年栗祭りが開かれるほどなのだという。
祭りの朝は、男性は焼き栗の屋台の準備で、火をおこしたり、大きな網の袋に入った栗を山と積んだりと大いそがし。祭りではさまざまな栗のお菓子の屋台が並んだり、バンドのコンサートがあったり、民族舞踊のグループが踊りながら通りを練り歩いたりと、素朴ながらも非常に楽しいお祭りです。
『レトロでかわいいポルトガルの紙もの』p.41
掲載されていた焼き栗の紙袋は、栗のイラストやロゴがついていたり、二色使いの印刷がされていたりとかわいい。各屋台がそれぞれオリジナルの袋を用意しているのかもしれない。日本の焼き栗は無地の袋や中華風のデザインであることが多い印象なので、これまた新鮮であった。
「ガロン」をまねた、紙製の棚飾り
ヨーロッパには、棚を飾るための「ガロン」という布があるらしい。日本でもレースや刺繡の布飾りはあるし、何となく想像は出来る。
しかし、これが高価であったために、ひと昔前のポルトガルではガロンをまねた紙製の棚飾りがあちこちで作られていたとのこと。紹介されていた人や景色、食べ物などのイラストがあしらわれたガロン風の紙たちは鮮やかで、とても代替品とは思えない。かわいい!
布や刺繍は汚れたら洗わなくてはならないが、紙であれば使い捨てもできるし、実は紙のほうが便利なのでは……? プリントでいろんな柄を作れるし……と思ってしまった。我が家にも導入しようかな、紙製のガロン。食器棚や本棚を飾ってみたいところである。
これ以外にも、「こんなのまでかわいいの!?」と驚いたのが、ポルトガルの教科書。レトロな映画のポスターみたい……人生で初めて、教科書にきゅんとしてしまったのだった。
コメントを残す