「セブンルール」に学ぶ、漫画家・鳥飼茜さん作品の魅力。2020年5月26日放送

鳥飼茜さんのマンガが好きだ。連載中の『サターン・リターン』も最新刊まで所持しているし、『おんなのいえ』『ユー・ガッタ・ラブソング』『地獄のガールフレンド』など、共感しながら読んだ作品は数知れない。「これほどまでにハマる理由は何なんだろう」と考えていたちょうどそのとき、フジテレビ系列の「セブンルール」で鳥飼さんの特集を観た。放送から作品の魅力を垣間見れたので、少し紹介したい。

リアルな表情をマンガに描き出す

鳥飼さんのマンガの魅力のひとつに、なんといってもキャラクターたちのリアルな表情がある。くしゃっと笑う顔やわんわん泣く顔、絶望、焦り……彼らの表情に感情移入することはしょっちゅうだ。

放送ではキャラクターを描く際のポイントとして、「自分の顔を鏡で見ながら描く」というのがあった。何も見ずに手癖のみで描くと、リアルに描けないことがあるからだそうだ。「絵だから人と同じではないけど、ある程度は動ける。鼻の穴も膨らませられるし、いっぱい目も開けるし、細めたりもできるし。顔が動かないキャラクターは描きたくないです」と語っていた。

そうしてリアルにこだわって描くからこそ、コマ数を少なくし、一コマ一コマを大きくするのだという。思えば確かに、一ページまるっとキャラクターの顔が描かれていたり、繊細な表情の移り変わりがありありと表現されていたりして、私はそこにぐっと惹きつけられている。「セリフもいらないくらいの顔を描きたい」と話していたのが印象的だった。

過去の自分を総動員して描く

キャラクターの表情の機微だけでなく、リアルなセリフや展開も魅力の一つだと感じる。ぶっとんだキャラクターであったとしても、彼らが発する言葉は何故かじんわりと胸に染みる。その理由として放送でわかったのは、鳥飼さんが“過去の自分を総動員して書いている”からだということ。

「今までの自分の受け入れたり、これは違うってしてきた自分の全部の時間をその漫画に全部出していい。それじゃないとやる意味ないと思っていて」と彼女は語る。

シーンの一つ一つにも、鳥飼さんの経験や考えが含まれていることがある。例えば、作品の一つに登場する「自分なんかいてもいなくても同じみたいな気がしておかしくなりそう」というセリフは、彼女がずっと考えていたことをそのまま書いている。また、最新作『サターン・リターン』は自身の経験をもとにしているのだという。

ここまでしてリアルを追求する理由として、「現実逃避の漫画はいっぱいあるから、それは私じゃないやつを読めばいいから、見たくないものを描かなきゃって思いはすごくあります」と述べていた鳥飼さん。

マンガにはいろんなジャンルがあって、私も少女漫画を読みたいときもあれば、アクション系の少年漫画でテンションを上げたいときもある。ただ、鳥飼さんのマンガを読むときはリアルな自分とリンクしながら読むときが多い。もやもやと考えていたことを代弁してもらったり、しんどかった出来事を代わりにスカッと解消してくれたり、彼女の作品によって心が楽になった経験たくさんある。

私が彼女の作品を好きな理由を少しでも知ることが出来て良かった。今後の作品も、ますます楽しみだ。

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