いざ、奥深いお茶の世界へ『RiCE』No.15「お茶の時間」

新型コロナウイルスの影響で外出自粛を迫られ、家で過ごす時間が増えたとき、「お茶を飲む時間が増えた」と友人たちが口を揃えて言っていた。今、私たちが改めて必要としているものが「お茶」なのかもしれない。関心も必要性も最大限に高まっている今、『RiCE』no.15 「お茶の時間」とともお茶について考えてみたい。

お茶のサードウェーブ? 現在の日本お茶事情

これまでお茶は、茶道のような「かしこまったもの」、あるいは「家で飲む気軽な飲み物」のいずれかという印象があったが、本誌によれば、ここ最近“お茶のサードウェーブ的な動き”が起こっているという。

コムアイさんとサカナクションの山口一郎さん、そして『GEN GEN AN』の丸若さんによるトーク「お茶アンテナと茶柱が立つ 新時代の茶飲み話をしよう」では、まさにその新しいお茶の文脈が語られていた。ふだんからお茶を飲むというコムアイさんと山口さん。現在のお茶事情に関してコムアイさんは、「最近は日本茶って単語を聞くと、新しいお茶文化を指している感じがします」と話す。

あるいは山口さんはコムアイさんの言葉を肯定しつつ、『GEN GEN AN』のスタイルに触れながら今のお茶文化やお茶との向き合い方について語っている。同店ではオーナーの丸若さんが急須でお茶を淹れてくれるそうだが、その際に茶道の場によく見る和服でなく、キャップを被った比較的カジュアルな格好でサーブしていることに驚いたという。

今この時代を生きている若い人が、お茶っていうものに対してこれだけフラットに触れるとこういうおしゃれな形になるっていうのに気づいた時に、伝統工芸とか、神道もそうだと思うんですけど、近くにあって気づかないものにもちゃんと魅力があって、僕らの世代って多分そういったものをちゃんとフックアップしたり混ぜ合わせていったりする世代なんだろうなという気がして。

『RiCE』no.15 2020年夏号「お茶の時間」お茶アンテナと茶柱が立つ 新時代の茶飲み話をしよう

茶葉はもちろん、急須や飲む際の器、淹れ方、飲み方にも多様性があり、誰もがお茶を自由に楽しめる時代になってきている。かしこまるわけでも、気を抜きすぎるわけでもない新しいお茶の在り方が今、生まれ始めているのだろう。

飲むだけでないお茶の楽しみ方

お茶はそれ単体で飲むことが一般的だと思っていたが、どうやらサードウェーブがやってくる中で、その楽しみ方も大きく広がっているようだ。個人的には、下記の三つのトピックが特に面白かった。

料理に活用

DJみそしるとMCごはんさんの連載「ごはんのかたち」では、新茶のおむすびが紹介されている。茶殻の水気を切り、しらすや梅などと合わせたおにぎり。特に新茶は香りがよいのはもちろん、やわらかく苦みが少ないので食べやすいそう。

梅とお茶が入った抗菌作用の塊のようなおむすびは、食べ物が傷みやすいこれからのシーズンにもぴったり。お茶の旨味と他の具材の旨味が掛け合わさって、まろやかな味わいです。

『RiCE』no.15 2020年夏号「お茶の時間」DJみそしるとMCごはん ごはんのかたち

ほかにも、新芽は天ぷらにしても美味しいとあり、お茶の“食べ方”は幅広い。思い返せば、私もアールグレイのクッキーやシフォンケーキを楽しんでいるし、抹茶の食品だってたくさんある。日本茶の食べ方が広がるのも、不思議ではないと感じた。

お酒と組み合わせ

「酒×茶」のコーナーでは、お茶のカクテルがずらり。ジンと深蒸し煎茶、ほうじ茶とカンパリなど、新しい組み合わせのベースをつくり、それを使ったジントニックやカンパリオレンジなどが紹介されていた。思えばお茶の苦味や香りはスピリッツやウィスキーと相性が良さそうである。茶葉はスーパーやネットですぐに手に入るし、家飲みにもいい。

お茶漬けアレンジも多様に

お茶漬けは手軽だからこそ、つくる際はワンパターンになりがちだった。しかし、ここでは「納豆寿司茶漬け」やオリジナルのXO醤とともに食べる「氷温抽出茶漬け」など、定番に囚われない自由なアレンジを知ることができた。お茶の可能性が無限に広がっているならば、お茶漬けの可能性だって無限だ。

⇒2023年9月追記
『魯山人の料理王国』でこだわり尽くしたお茶漬けの話があり、こちらも知らないアレンジが盛りだくさんだった。温故知新の知恵で、お茶漬けを楽しんでいきたい。

今回は特に、新しいお茶の文脈について紹介したが、本誌はほかにも、茶道やお茶の歴史、お茶にまつわる本の紹介など、押さえたい基本のキもたっぷりと解説されている。今一度お茶文化を知りたい人にもおすすめの一冊だ。

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襟田 あいま
食べること・読むことがとにかく好き。食と本にまつわる雑感を日々記録しています。